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第一章

8亀裂

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「貴女は何も解ってないわ!」


「ミーシャ!」



私が止めるのも聞かずにそのまま出て行ってしまう。
言い過ぎた私も悪いかもしれないけど、私が殿下との婚約も大聖女の座も望んで良いな事をちゃんとわかって欲しかった。



イライザは隠すことなく大聖女の座を狙い、王太子妃になる事を願っている。
公でも殿下との時間を長く一緒にいるのはイライザだから、周りもイライザが有望だと思っている。


ただ彼女は貴族至上主義な考え方を思っている。


ルーアンに関しては解らない。
彼女は野心家であるが、王太子妃候補を狙っているかと聞かれれば微妙な所だった。


ミーシャも殿下に憧れに近い気持ちを持っていた。


だけど、彼女は解っているのだろうか。
おとぎ話のよう二王子様と結婚すれば幸せになれるとは限らない。


別に否定はしない。


「だけど、王子様が問題だわ」


肩書だけは立派だけど、中身は最悪だもの。
ジュリエットはこれまで嫌がらせのように公の場で他の聖女と差別するようにドレスをベージュや地味な物にされ、他の貴族に馬鹿にされたこともある。


父に対する侮辱や、アルフレッドが必死で頑張って特待生を得たのに、馬鹿は努力するしかないと言われた事は死んでも忘れない。


勉強しても馬鹿のままの王子に言われたくない。


おとぎ話をぶち壊すような王子がオルヴィスだった。


ジュリエットがパーティーにいるのが気に入らないと言われれば優雅に微笑んでその場を去って。
常に無理難題を押し付けられても寝る間を惜しんで勉強して聡明な聖女であり続けた。

その所為で更にオルヴィスの神経を逆撫でる事になったが、ジュリエットからすれば当てつけのように勉強をした。

他国の貴賓からは聡明な聖女として評価を受ける一方でオルヴィスはジュリエットの影に隠れていた。



「絶対に王太子妃になるもんですか。死んでも嫌よ」


聖女として自害なんて許されないかもしれないが。
場合によっては命を絶つ事も考えていた。


オルヴィスの手に堕ちるぐらいならばと。


「えっ…」


部屋に戻ろうとした時だった。


背筋に凍り付く何かを感じたのは。


「結界が壊れる」


ジュリエットは体から感じとった。


東西南北に敷かれている結界の糸が絶たれてしまった事が。



大きな揺れと共に、王宮内の侍女や侍従は騒ぎ出す。
地震は直ぐに止まったが、結界が完全に断たれた事により被害は相当な物となるだろう。



(恐れていた事が…)


ここ最近イライザもミーシャも祈りに集中していないのを危惧していたが、まさかこんなことになるとは。


無事では済まないだろう。


そう思っていたが。



「全ての責任はお前だ。ジュリエット!」


大勢の前で責任を擦り付けられることになってしまった。
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