8 / 72
第一章
6騎士団
しおりを挟む憂いの表情をするジュリエットを騎士団達は痛々しそうに見つめていた。
王宮に集う聖女達は必要最低限しか外に出る事はない。
ただ、ジュリエットだけは違っていた。
自ら危険な場所であっても自分に得が無くとも、向かい。
時には何もできない事で、八つ当たりのような目にあっても真摯に向き合って来た。
国民が貴族に、王族に疑念を抱く中。
同じ国の人間がいがみ合う事が無いように交渉の場を設けたりと尽くして来た。
時には戦死した騎士の家族に丁寧な手紙を送り民の心を繋ぎ止めていた。
だがその功績は全てイライザが美味しい所だけを奪っていた。
「嘆かわしい」
「滅多のことを言うんじゃない」
ジュリエットの護衛を務める第二騎士団達は不満を零す。
誰よりも国に就くし、見返り無く働いているのはジュリエットであるのに、その思いも働きも顧みられることはない。
「天は…女神はどうしてこんな惨い仕打ちを」
「おい…」
「そうではありませんか。私はローチェスト領地出身です」
ローチェスト領地で生まれ育った騎士達はジュリエットがほとんど脅しに近い形で攫われ無理矢理聖女に召し上げられた後に、過酷な修行を強いられて事を知っていた。
聖女の修業と言えど、幼い子供に惨い仕打ちを行い。
当時は聖女が揃っていない事から無理矢理結界の力を引きだす為に虐待に近い行為をしていたのだ。
時には聖女の勤めが果たせなければ父親や領地はどうなるか解らないと脅しをかけていたのだから。
「ジュリエット様が余りにも気の毒でなりません」
「あんな馬鹿王子の婚約者等」
第二騎士団はジュリエットを傍で見守って来たからこそオルヴィスと結婚すれば不幸になる事が解っていた。
「団長、私はあの王子がジュリエット様を軽んじ、侮辱しているのが許せません」
「この際闇に投じるしか…」
「馬鹿な事を言うな」
ジュリエットの為にオルヴィスを亡き者にする事すらいとわない彼等に団長のレイン・ハルバートは部下を咎めながらも、自分も同じことをしかねないと思った。
(アルフレッド・・・)
五年前の事は今も忘れることができなかった。
同じ王立学園で友人だったアルフレッドとレインは同年代で仲が良かった。
聖女として召し上げられ自由の無いジュリエットを救う為どれだけの努力をしていたか知っていた。
だからこそ。
(ジュリエット様を守らなくては…)
アルフレッドの為にもジュリエットが万一王族に切り捨てられることがあるならば、騎士として、友人として守る覚悟をしていた。
そんな事にはならない事を祈っていた。
54
お気に入りに追加
2,434
あなたにおすすめの小説
妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています
今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。
それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。
そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。
当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。
一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
忌み子にされた令嬢と精霊の愛し子
水空 葵
恋愛
公爵令嬢のシルフィーナはとあるパーティーで、「忌み子」と言われていることを理由に婚約破棄されてしまった。さらに冤罪までかけられ、窮地に陥るシルフィーナ。
そんな彼女は、王太子に助け出されることになった。
王太子に愛されるようになり幸せな日々を送る。
けれども、シルフィーナの力が明らかになった頃、元婚約者が「復縁してくれ」と迫ってきて……。
「そんなの絶対にお断りです!」
※他サイト様でも公開中です。
妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。
国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。
「もう無理、もう耐えられない!!」
イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。
「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。
そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。
猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。
表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。
溺愛してくる魔法使いのリュオン。
彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる――
※他サイトにも投稿しています。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる