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第一章

1鳥籠の中で

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明け方になり日が差し込み目を覚ます。
冷たい風が頬に当たり、朝一番の沐浴を行う事になっている。



冷たく肌に突き刺さるような冷水は針で刺されるような痛みに耐える。
聖女としての大事な修行。そして朝起きて感謝の祈りを捧げ、食事前に祈りを捧げる。


王太子殿下に会う前に祈りを捧げ。
そして私達は東西南北の聖女として祈りを捧げる。


ジュリエットは北を守る聖女として召し上げられた。
聖女として召し上げられ今では年長者であるのだけど、他の聖女はジュリエットよりも若々しかった。


派手好きな王太子殿下にとって私は既に花盛りを過ぎた聖女。
ただ国の対面の為にいるような存在だった。


「相変わらず辛気臭いわね、行き遅れ聖女様は」

クスクス笑ってジュリエットを馬鹿にするのは同じく聖女のイライザだった。
彼女は16歳で、裕福な子爵家令嬢だった。


ジュリエットのような田舎貴族とは正反対だった。
最初に聖女として選ばれたことを気に入らないと言っていた。


「祈りの時間よ」

「だぅたら一人ですれば?古臭い儀式をするしか能がないんだから。干からびた聖女」

「ちょっと…そんな言い方」

「何よいい子ぶって」


イライザを咎めるのは同じく聖女のミーシャ。
彼女は平民であるが上流階級出身で、彼女は私よりも年下だけどジュリエットよりも少し前に召し上げられた。

修業をしていた頃から仲良くしてくれていた。
他の二人とは異なり良く話す。


「馬鹿馬鹿しい」

「何ですって!」

「騒ぐなら部屋でしてくれる。煩いわ」


そして一人本を読んでいるのがルーアン。
最年少で常にクールな彼女は何を考えているか解らない。



「聖女様方、王太子殿下がお待ちです」

「「「はい」」」



祈りを終えて王太子殿下の元に挨拶に向かう。


だけど私にとっては一番の苦痛の時間で、無意味な時間だった。




「ごきげんよう。皆」

「ごきげん麗しゅうございます。オルヴィス殿下」

「今日も祈ってくれたんだな」

「はい、殿下の為に祈らせていただきました」



王太子殿下の為じゃなくて国の為に祈るのが聖女なのに、イライザの言葉を当然のように受け取る殿下に呆れてモノが言えない。


「皆の様子はどうだ」

「変わりございません」

「ちょっと、他に言い方はないの?殿下に対して失礼でしょ」

「いいんだイライザ。相変わらず可愛い気が無い女だな。他の聖女のように花が無い」

「申し訳ありません」


聖女というのは後宮の花とは違うというのに。
王の側妃候補と同じにされているのではないかと思うと不愉快だった。


「殿下ぁ!ジュリエット様は私達に厳しい事ばかり言うんです」

「何だと?君は筆頭聖女だろ!模範にならないくてどうするんだ」

「申し訳ありません。ですが…」

「言い訳をするな。聖女の癖に」


ジュリエットの言い分は何も聞いてくれない。
だから言葉を飲み込むしかなかった、私の言葉を…心の声に耳を傾けてくれる人はいなかった。


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