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第一章許嫁編
6呼び出し
しおりを挟む決めてしまえは後は行動するのみだった。
普通はここで自分の境遇を嘆いたりするだろうが、父一人、子一人でだということもありこれまで苦労三昧な日々を送ってきたのだ。
ある程度の事でへこたれない。
「この際、日本各地を回るのもいいかもしれんな」
「日本各地…」
「そうだ、包日本中の料理を食べ歩くのも…旅をしながら」
「楽しそうです」
二人は既に新たな生活の事を考えていた。
「心機一転をしよう。その前に殿にご挨拶をしなくてはならない」
「はい、私もご挨拶をしなくては」
縁談に関しては何の音沙汰もないので破談になったと解釈していたのだが。
夕暮れ時の事。
「お城から文だと…」
「ハッ、至急ご息女とご一緒にと輝宗様より」
「なっ…これは直筆!」
奥州の城主、伊達輝宗からの直筆だった。
通常は直臣でもない家臣に直筆の文を送るなどあり得ないのだが。
「こちらはご息女に」
「私に…ひっ!」
千春宛の文は輝宗の伯父で幼少期に行儀見習いとして大森城に奉公先で可愛がってくれた城主、伊達実元だった。
「至急お二人には米沢城にお越しいただくようにと」
「お父様…」
二人は冷や汗を流す。
縁談での事で何かあるのか。
無礼をした覚えはない。
しかし千春は不安を抱かずにはいれなかった。
「お父様…やはり殿様は私を」
「言うな千春!もしお手打ちになったとしてもお前だけは助けていただけるようにお願いする」
「私…お父様の娘で幸せでした」
二人は泣きそうな顔で抱きしめ合った。
「あっ…あの、できますればお急ぎいただきたいのですが」
「完全に二人だけの世界だな」
使者は困った表情で二人を見ていた。
「駕籠…」
「しかしも上等な」
下級武家が使用する駕籠とはわけが違う。
「殿より命でございます。御乗りください」
「はぁ…」
何故こんな待遇なのかと思いながら米沢城に到着した後二人は緊張しながら城内に通された。
「お待ちしておりました矢内様、千春様」
侍女に出迎えられ、そのまま客間に案内された二人は特別待遇だった。
日当たりが良く、部屋は暖かく上等なお菓子とお茶を用意されている。
「どうなっているのでしょうか」
「解らん」
このまま処罰されると思っていたのに何故だと思った矢先。
「殿おなりでございます」
「「ははっ!」」
二人は深々と頭を下げるとそこに現れたのは伊達輝宗と伯父の実元だった。
頭を下げたままの二人に輝宗は。
「硬くならずともよい。頭を上げよ」
「しっ…しかし」
「聞こえなかったか。わしは上げろと申したのだ」
「はい!」
背筋を伸ばして急いで頭を上げる二人だったが、輝宗は笑みを浮かべていた。
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