許嫁に婚約破棄を突きつけられ、親友の身代わりに鬼の巣窟に嫁ぐことになりましたが、冷徹の鬼と呼ばれる旦那様(仮)は恋女房なんて聞いてせん!

ユウ

文字の大きさ
上 下
11 / 12
第一章許嫁編

6呼び出し

しおりを挟む



決めてしまえは後は行動するのみだった。
普通はここで自分の境遇を嘆いたりするだろうが、父一人、子一人でだということもありこれまで苦労三昧な日々を送ってきたのだ。


ある程度の事でへこたれない。

「この際、日本各地を回るのもいいかもしれんな」

「日本各地…」

「そうだ、包日本中の料理を食べ歩くのも…旅をしながら」

「楽しそうです」

二人は既に新たな生活の事を考えていた。

「心機一転をしよう。その前に殿にご挨拶をしなくてはならない」

「はい、私もご挨拶をしなくては」


縁談に関しては何の音沙汰もないので破談になったと解釈していたのだが。


夕暮れ時の事。


「お城から文だと…」

「ハッ、至急ご息女とご一緒にと輝宗様より」

「なっ…これは直筆!」


奥州の城主、伊達輝宗からの直筆だった。
通常は直臣でもない家臣に直筆の文を送るなどあり得ないのだが。

「こちらはご息女に」

「私に…ひっ!」

千春宛の文は輝宗の伯父で幼少期に行儀見習いとして大森城に奉公先で可愛がってくれた城主、伊達実元だった。


「至急お二人には米沢城にお越しいただくようにと」

「お父様…」


二人は冷や汗を流す。
縁談での事で何かあるのか。

無礼をした覚えはない。
しかし千春は不安を抱かずにはいれなかった。


「お父様…やはり殿様は私を」

「言うな千春!もしお手打ちになったとしてもお前だけは助けていただけるようにお願いする」

「私…お父様の娘で幸せでした」


二人は泣きそうな顔で抱きしめ合った。


「あっ…あの、できますればお急ぎいただきたいのですが」

「完全に二人だけの世界だな」

使者は困った表情で二人を見ていた。



「駕籠…」

「しかしも上等な」


下級武家が使用する駕籠とはわけが違う。

「殿より命でございます。御乗りください」

「はぁ…」


何故こんな待遇なのかと思いながら米沢城に到着した後二人は緊張しながら城内に通された。

「お待ちしておりました矢内様、千春様」

侍女に出迎えられ、そのまま客間に案内された二人は特別待遇だった。

日当たりが良く、部屋は暖かく上等なお菓子とお茶を用意されている。


「どうなっているのでしょうか」

「解らん」

このまま処罰されると思っていたのに何故だと思った矢先。


「殿おなりでございます」

「「ははっ!」」

二人は深々と頭を下げるとそこに現れたのは伊達輝宗と伯父の実元だった。


頭を下げたままの二人に輝宗は。

「硬くならずともよい。頭を上げよ」

「しっ…しかし」

「聞こえなかったか。わしは上げろと申したのだ」

「はい!」

背筋を伸ばして急いで頭を上げる二人だったが、輝宗は笑みを浮かべていた。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ

海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。 あぁ、大丈夫よ。 だって彼私の部屋にいるもん。 部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?

京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。 顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。 貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。 「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」 毒を盛られ、体中に走る激痛。 痛みが引いた後起きてみると…。 「あれ?私綺麗になってない?」 ※前編、中編、後編の3話完結  作成済み。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

父が転勤中に突如現れた継母子に婚約者も家も王家!?も乗っ取られそうになったので、屋敷ごとさよならすることにしました。どうぞご勝手に。

青の雀
恋愛
何でも欲しがり屋の自称病弱な義妹は、公爵家当主の座も王子様の婚約者も狙う。と似たような話になる予定。ちょっと、違うけど、発想は同じ。 公爵令嬢のジュリアスティは、幼い時から精霊の申し子で、聖女様ではないか?と噂があった令嬢。 父が長期出張中に、なぜか新しい後妻と連れ子の娘が転がり込んできたのだ。 そして、継母と義姉妹はやりたい放題をして、王子様からも婚約破棄されてしまいます。 3人がお出かけした隙に、屋根裏部屋に閉じ込められたジュリアスティは、精霊の手を借り、使用人と屋敷ごと家出を試みます。 長期出張中の父の赴任先に、無事着くと聖女覚醒して、他国の王子様と幸せになるという話ができれば、イイなぁと思って書き始めます。

婚約破棄されてしまった件ですが……

星天
恋愛
アリア・エルドラドは日々、王家に嫁ぐため、教育を受けていたが、婚約破棄を言い渡されてしまう。 はたして、彼女の運命とは……

すべて『反射』してしまうようです

夜桜
恋愛
 辺境伯令嬢エイラは、子供のころはどん底の不幸だった。  不運が続く中、お見合いで伯爵と婚約を交わす。しかし、それは望まぬ婚約だった。婚約を破棄するも更に不幸が続く。  他の令嬢から嫌がらせを受けるようになっていた。  苦悩の中、幼馴染のブルースと再会。彼がいると幸せになれた。ブルースが近くにいると不思議な力『反射』を受動的に発動できたのだ。  反射さえあれば、どんな嫌な相手からの罵詈雑言も、事故や災難さえも『反射』する。決して不幸が訪れなかった。  そんなブルースを傍に置きたくてエイラは奔走する。

夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。

Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。 それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。 そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。 しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。 命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

処理中です...