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第一章許嫁編
4勘違い
しおりを挟む冷えた体を温め、景綱はかいがいしく世話をされる。
「ありがとうございます」
「体は温まったようですな」
この状況は何だ。
一部始終を見ていた彼らは突っ込みたくなった。
とても温かい空気だ。
完全に二人のペースに振り回されている。
「喜多殿」
「はい」
「当人も来られたのに、こんなことを言うのは申し訳ないのですが」
「待たれよ矢内殿!」
「鬼庭様、景綱殿は梵天丸様の守役ならばこれから良い縁談も恵まれるはずです」
重定は景綱の事をよくらない。
だが少し話せばその人となりは解るのだ。
「景綱殿は実のある男です。私の娘よりももっと相応しい女子が見つかりますよ」
「そんな矢内様」
重定は景綱が嫌いではなかった。
もしかしたらわざと遅れたのではなく本当に事情があったのだと思ったのだ。
「私もそう思いますわ」
「千春殿…」
「私のようなハズレ嫁よりもちゃんとした方をお迎えください」
二人はできるだけ景綱を傷つけないように言葉を選んだ。
(お父様!)
(解っているぞ千春)
二人は目で会話をした。
ここで円満に縁談を白紙にして、尚且つ景綱に罪悪感を抱かせないようにしようと考えた。
(蘭を好いていたのに気の毒だわ)
(男の自尊心もあるからな)
二人はうんうんと頷いた。
困惑する景綱に対して要らないお節介をしたのだ。
しかしその他の者達は――
「喜多よ、二人は勘違いをしていないか」
「気のせいか、景綱に対して憐れむような目を向けています」
「察するに諏訪の姫との縁談が白紙になった事で景綱が傷ついていると思っているのでは?」
「なんという勘違い親子だ」
眩暈がしたのだが、二人はこのまま帰る気でいたのだが、喜多は非常にまずいと思った。
「千春様、率直にお伺いしますが…愚弟との縁談はどうお考えですか」
「はい?」
「姉上!何を…」
「お前は黙ってなさい」
このままでは縁談は破談になる。
喜多はこの縁談をなんとかして纏めたかった。
「私の弟は融通がっかず、気が短く、空気が読めません」
「姉上、更に追い打ちをかけてどうするんですか」
「お前もな…綱元」
景綱の欠点ばかりを言っては本当に縁談を断られるのだが、喜多は完全にテンパっていた。
しかし…
「ご自分の弟をそのように卑下する者ではありませんぞ」
「矢内殿…」
「空気を読めず色々足りないのは私もですから」
他人にフォローをされてしまっていた。
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