許嫁に婚約破棄を突きつけられ、親友の身代わりに鬼の巣窟に嫁ぐことになりましたが、冷徹の鬼と呼ばれる旦那様(仮)は恋女房なんて聞いてせん!

ユウ

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第一章許嫁編

1許嫁不在

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今日の天気は晴れのはずだった。

なのに屋敷を一歩出ると雨が降り出した。


「今日は晴れだと…うわぁ!」

片倉家に向かう途中雨が降り出した。

「朧車、大丈夫?」

「問題ないみたいだな」

「はい」

返事はない。
だから大丈夫だと思いながら、いきなり雨がひどくなるとは思わなかった。

「それよりもこの朧車でいいのか」

「輿なんて用意できないでしょう」

通常腰輿を用意するのだけど、こっちの方が色々便利だ。
ちなみにだけどこの朧車も戸千春が使役…というか見つけて連れ帰ったのだ。


普段は普通の牛車を装っているが、夜になると真の姿になる。
馬車よりも早いし、緊急時には必ず使う。


「付喪神の皆を連れて行くのか」

「置いていくと大変でしょう」

「そうだな」


雨が酷くなり嵐に風までも。
まるで今日の顔合わせは不吉だと言わんばかりだった。


「お父様!雷が!」

「ものすごく不安だ!」



しばらくして片倉家に到着した。


少しこじんまりとした武家屋敷だ。
庭もあるが、本当に小さな平屋の家といった感じだ。


「お待ちしておりました!」


二人が玄関先でキョロキョロしていると出迎えてくれたのは二十代後半の女性だった。


「お初にお目にかかります。私は片倉喜多と申します。景綱姉でございます」

「矢内重定と申します」

「娘の千春でございます」

喜多様に案内されて屋敷の中に入ると…


既に席に座っていた。
今回の立会人となる方たちも一緒なのだけど。


あの方が片倉景綱様?


「あの…景綱様でございますか」

私は視線が合うと尋ねてみた。

「私は喜多の弟の綱元でございます」

「では景綱様のお兄様?」

「いいえ、景綱と私は血が繋がっておりません」


いまいちちんぷんかんぷんな千春は耳をかしげた。
困惑する千春に苦笑した綱元は説明することにしたのだが…

「私と綱元は異母姉弟です。そして景綱は異父姉弟なのです」

「それは…」


随分とややこしい家系図だった。


「まぁそのことは今は良い」

「そうじゃな」

立会人の二人が咳ばらいをする。

しかしここで問題が発生した。
許嫁となる本人がまだ到着していないのだ。

「あの…景綱様は」


千春は何故本人が来ていないのか尋ねるも一同は困った表情をする。

「喜多、お前はどういう教育をしておるのだ。こんな大事な日に」

「申し訳ありません。あれほど…」

困り果てる喜多。
綱元もあきれて果てていたのだが、約束の時間を大幅に過ぎても本人が来ることはなかった。


結局昼過ぎになっても景綱は来ることはなかった。


「あの馬鹿!」

「まさか、このような」


わなわなと震えながら怒る立会人の二人。
姉の喜多は頭を抱えていた。

「ご無礼を!」

「いいえ、きっと景綱様は私との縁談が納得できないのでしょう」


顔合わせの日にわざと来ないなんて余程嫌なのだと思った千春は落ち込んだ。


同時に申し訳なく思ったのだった。


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