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第一章
18暴露
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「なっ、何だこれは!」
真っ青になる豚侯爵は何とかしてこの場を逃れようとするももう一つの音声が流れる。
『これでお前は王都内の商会を牛耳る女商人だ』
『ええ、後は邪魔なあの人に消えてもらうだけです』
豚侯爵が寝所でカスケード夫人とむつみ合う光景だった。
『悪い女だ』
『だってあんな無能な男に魅力はありませんわ。それに十年以上も浮気をしてもまったく気づかないんだもの。フリードだって他所の男とできた子だもの…利用価値があるから産んだけど。出来が悪くて』
『はははっ、お前も言うようになったな』
『お腹には侯爵様の子がいるんですもの』
そこで映像が切れた。
「随分と盛っておられるようですね」
「なっ…何だ」
「それから貴女達が密会した店ですが、ドアをしっかり締めないと映像に移るんですよ?我がボロネーゼ商会が防犯用に作った映像道具ですから」
そう言いながらマスクを取ると。
「リナ!」
「何で!」
侍女の装いをしてずっとこの会場にいたのはリナ・ボロネーゼ令嬢。
「私からの贈り物もございますわよ」
「セリア!」
メイドの服装をしたふくよかな女性は変装したセリア夫人だった。
「どうして…」
社交界では亡くなったと噂が流れていたが。
「あくまで噂ですよ。噂とは飛躍するので少し利用させていただきましたの」
「貴女は何者なの…ただの王妃様の傍付き侍女じゃ」
「名乗る程ではありません。ただの女官で正義の代理人です」
「それは薔薇勲章!」
胸元のバッチを見せると悲鳴を上げる。
薔薇勲章。
それはどの国も共通する女官の証。
ただし、ただの女官ではない。
君主から特命を命じられた特殊な立場である。
「詐欺容疑、殺人罪、その他の罪で貴方達を捕縛いたします」
「何ですって…きゃああ!」
使用人達がカスケード夫人を捕らえた。
「何をする!私を誰だと」
「そうそう言い忘れましたが、ここの会場の映像は王宮のある部屋にも繋がっております。何処でしょう?」
映像を切り替えると。
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ナビオ・モラノルト文官長だ。
『貴方の悪事は私の部下全て暴いている。後程沙汰を下されるでしょう?詐欺グループも既に捕らえております』
「なっ…待て!何かの間違いです」
『弁解は後程聞きますよ』
ここで映像は切れる。
「カスケード伯爵、ハンズ子爵。お二方は殺人罪だけでなく詐欺罪もありますので覚悟してください」
「何で…どうして」
既に二人の両親は膝をつき、反論する気力がない。
ルーナ・バンズだけは違ったが。
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