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第一章
17サプライズ
しおりを挟む時間が三十分過ぎても招待客は来なかった。
現在席についているのは今回の主役の学友だけだった。
商会の関係者や上位貴族等が誰一人として来ていない。
「おい、どういう事だ」
「何で夫人会の会長も、副会長にギルド長も来てないの!」
カスケード伯爵と夫人が声を上げた。
「招待状はちゃんと用意したの」
「はい、滞りなく」
侍女が静かに告げると。
「待って、もしかしてサプライズ?」
「え?」
「そうでしょう!」
豪華な料理と招待客の席だけが空いているのでサプライズと思うのは自然だった。
「そうなのか?」
「はい、本日の良き日の為にご用意させていただきました」
「クロックス侯爵様、こちらへ」
「ああ…」
フットマンが案内し私はアルフレッドに合図を送る。
パチン!
合図と一緒にライトが消える。
「何が起きるのかしら」
「どんなサプライズなのか」
二人はワクワクしながらライトが当てられ、映像が映し出される。
『お久素振りですわ。ルーナさん』
「は?」
映像に移ったのは一人の令嬢だった。
『貴女にデザインを盗まれおまけに婚約者も盗まれたたのに、本当に良い身分です事』
「なっ…」
『貴女に大事な息子を騙された母親として許しません。貴女の所為で私の店は潰されて!』
「何よ…何なの!」
ルーナ・バンズに利用された人間は多かった。
これまで多くの人を踏みつけて利用して来た人間の数多さは半端なかった。
「どういう事だ!」
「こちらもサプライズでございます」
もう一つ映像が流れる。
『本当に馬鹿な女よね』
『まんまと騙されるとは…君と俺であの女を冤罪の罪を着せて晒し物にしてやったのに』
『まだ頑張るなんて馬鹿よね?』
『はははっ!これでボロネーゼ商会の独占権利は俺達の物だ!君が上手くリナの振りをして宿に寝泊まりしたおかげでな!』
『あそこで泣き叫んで暴れればもっと慰謝料を…』
「止めろ!何だこれは!」
映像を止めさせるように壁の前に立ちふさがる。
しかし映像が続く。
二人が商会に侵入している映像だった。
『何をするの!』
『大人しくしろ!』
『やめてぇ!』
『煩いわよ!』
抑え込まれたリナ令嬢を殴り、無理矢理薬を飲ませ眠らせた。
そして首にロープを結び付けてその先に糸を結び部屋を出て行き、細工をする。
「何だこれは…」
映像はアップされる。
「あの小瓶のシンボル…毒だわ」
「嘘でしょ…なんて事を」
「リナ令嬢は罠に嵌められた?」
「でもあんな毒薬誰が」
毒物なんて二人が用意できるはずがない。
『これで私達は幸せになれるのよね』
『そうだあの方が…クロックス侯爵様に間違いはない』
「これは…」
豚侯爵の顔色が一変する。
ここから仕返しの始りだ。
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