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第一章
16婚約式
しおりを挟む豪華絢爛な領地に音楽家。
盛大に賑わうパーティー会場では多くの使用人が控えていた。
今日はカスケード家の子息とハンズ家の息女の婚約パーティーだった。
「クロックス侯爵様!」
「本日は本当にありがとうございます」
アバドン・クロックス侯爵。
名門貴族の生まれで、多くの商会を集中に収めているが黒い噂が尽きない。
表では将来性のある貴族に援助しているらしいけど。
「豚侯爵が来たわね」
「ああ、今回の婚約式のセッティングも彼がしたらしいが」
「良くも抜け抜けと」
じゃらじゃらと宝石を身に着け下品な笑みを浮かべる。
口でと態度が見合ってない。
「悲しい事を乗り越えて幸せを手にしてくれて嬉しいよ。彼女の事は残念だったが」
「ありがとうございます。きっと彼女も天国から僕達の事を応援してくれているはずです」
「残念です。彼女にも婚約パーティーで友人として参加して欲しかったのですが」
泣きそうな表情をする二人。
聞くだけでも胸糞くなるが、周りは。
「本当になんてお優しいのかしら」
「あんな最低な女の事まで」
リナ令嬢は不義を働き、婚約者を苦しめ続けた最低な悪女と信じて疑わなかった彼等。
最後まで迷惑をかけて自殺を図って、病院に運ばれるも助からなかった事を同情するどころか、酷い言葉を浴びせている。
「しかし、まだ客人はあまり集まっていないようだね」
「はい、まだお時間がありますし」
婚約式が始まる三十分前。
招待客は、若い貴族ばかりで高位貴族はまだ到着していない。
「ハンズ夫人」
「まぁ、来てくださったの」
「ええ、本日は誠におめでとうございます。王妃陛下より代理でお祝いの言葉を預かって参りましたの」
「まぁ!」
私はあの日オーダーメイドしたドレスで婚約式に参加した。
「お隣の方は…」
「先日はうちのがお世話になりました。素敵なドレスをありがとうございます。こちらは心ばかりの品です」
婚約祝いにシャンパンを送り、傍にいる二人にお祝いの言葉を贈る。
「本日は誠におめでとうございます」
「ありがとうございます」
「色々噂はおありかと思いますが頑張ってくださいね。前婚約者の方もきっとお二人の幸福をお祈りされているはずですわ」
「え…ええ」
視線を逸らせる彼女に私は見逃さなかった。
「リナ令嬢も残念でしょうね。聞けばルーナ様とは一番の親友でしたから結婚式に参加したかったでしょうに」
「ええ…」
これは最後の嫌味だ。
リナ令嬢がルーナ・ハンズを友人として慕っていたのは真実だけどこの女は違う。
本当の悪女には解らないでしょうけどね?
「ではごきげんよう」
この後の最高の舞台を用意してあげる。
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