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第一章
9夜の侵入~アルフレッドside
しおりを挟む真夜中の時間、待機室で確認をする。
『侵入成功』
「了解だ。見回りが来る時間までの間、セキュリティーを解除できるのは二分。それ以上は無理だ」
『解った』
通信映像機を使って部屋の様子を見る。
部屋の様子を映し出せるように道具を設置したキャサリンだが。
「この美術品、盗品だな…他にもこの絵画も」
全て他の商会の物の商品だ。
「他所の商会の品の数々だな。こっちの美術品も、この花瓶もだ」
「潰した商会から奪ったのか…なんて奴だ」
『金庫は開いたわ。中はリストが出て来たわ』
「リスト」
金庫の映像を映してもらうと名前がずらりと出て来た。
書かれている名前はかつては名のある商会だったが傾き、店の評判が悪くなって潰れた店だ。
『ついでにリストの中にボロネーゼ商会もあるわよ。他には…』
リストの名は次の標的が書かれている。
その中には共同経営や仕入れ先の商会の名前も書かれている。
利用できなくなったら切り捨てる気だったのか!
リストと一緒に帳簿と一緒にできて来たのは権利書だった。
『最低、あの女…』
「どうした?」
『金庫の中に今まで騙して来た商会の奥方から弱み握っているわ。他にも…』
口にも出せないような証拠品が出て来たのか。
「まずいぞ、見回りがもうすぐ戻って来るぞ」
「キャサリン、とにかく急げ…」
『ダメ、まだ調べないと』
「おい!」
通信を切られて連絡が途絶えてしまった。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないだろが…無事を祈るしかない」
一度やると決めたら最後までやる奴だから止める事は難しい。
俺の心配をよそに。
「ただいま」
「無事で…その血は」
「返り血」
「「は?」」
一時間後服に血を浴びて帰って来たキャサリンに絶句した。
「商会は無事に抜けたんだけど、夜道で少しガラの悪い男に絡まれたの」
「で?」
「とりあえず胸糞悪くてムカついたからボコボコにしてやろうと思ったら素敵な情報を吐いてくれたの。店の裏にいるから」
「連れて来たのかよ!」
爽やかな笑顔を浮かべながら恐ろしい事を告げる。
「おら、吐きな」
「ぐぁ!」
「止めてくれ!」
どっちが悪人か解らない。
「アンタ達、商会の警備をしていたにしては随分とガラが悪いわね?さぁ吐きな」
「ひぃぃ!」
「鬼!」
悪人には容赦の無いキャサリンに捕まったのが運の尽きだな。
「しかし相変わらず悪人をひっかけるな」
「正義の女神の加護がついているんじゃないか」
いいのか悪いのか解らない。
「吐けよ!死にたくなかった吐けやぁぁぁ!」
ここまでくると悪人が哀れになるが。
「だが良い知らせが来た」
「え?」
「リナ嬢の意識が戻った」
「本当か」
悪い事ばかりではなかった。
ずっと意識不明の伯爵令嬢の意識が戻ったとなれば一歩前進だ。
「ではこっちも進めようか」
「はい」
これから悪人の公開処刑の始りだ。
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