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第一章
5三人だけの会議
しおりを挟む依頼を正式に受けた後に私は調査を進めた。
表向きに調べている時点で、胸糞くなるほどの屑野郎だった。
浮気相手はリナ。ボロネーゼの幼馴染で親友だとか。
曰く、友人として親しくしていたそうだが。
婚約者とのデートをすっぽかしてデートをしている証言を得た。
ルーナ・ハンズ子爵令嬢は貴族であるが裕福ではなかった。
先代からの借金で生活は決して裕福ではなかったのだが一年前に事業に失敗している。
同い年で家が商売をしているリナ令嬢は幼少期から英才教育を受け、慈善活動も活発に行い商売のイロハを叩きこまれていた。
失敗を繰り返しながらも質の良い製品を作り、贅沢品の値段を上げて得た利益を寄付していた。
商会で働く使用人を大切にしている事から好かれていた。
対するルーナは商売の才能がなく売れなかったら、職人の責任にしていた。
実際ルーナ・ハンズが個人で経営している商会の使用人の表情は良くないし、仕事をする気があるのかという程だ。
「商会で売られているお菓子だけど」
「マズイ、何だよこれ」
私はこう見えて美食家だ。
女王陛下の傍付き故に最高のお菓子を求めて旅をする事も少なく無い。
「確かに酷いな」
「クーさんも思うでしょ?」
下町食堂の店長であるクードウェルさん。
実はここは駆け込み教会となっており、さっきのような依頼人を受け入れる場所になっている。
クーさんは元は王宮にて侍従長まで上り詰めた人だった。
裏では諜報員をしていたのだけど、引退した後に下町で飲食店を営みながら迷える子羊の悩みを聞いていた。
「ハンズ商会ではあまり良い噂を聞かないな」
「カスケード商会も似たようなものでしたよ」
男性用のスーツを取り扱っているようでアルフレッドは店に入っていたようだけど、接客が悪い。
「リナ令嬢が自殺する前に俺はボロネーゼ商会で服を買ったが流石だった。買いたいと思わせる品に接客だった」
「きっと今まで客様を愛して来たのでしょう」
服などは作り手の心を表す鏡。
思いを込めて、愛を込めて商品を作りお客様に届けていたのでしょう。
「ボロネーゼ伯爵家は、下級貴族であるが王家から花を賜った一族だ」
「今回の事件を公の場で調査を中断したのは背後に高位貴族がいる。計画があまりにも出来過ぎている」
ボロネーゼ伯爵は馬鹿な人じゃない。
けれど、人が良すぎる面があるから使用人を調べるべきか。
「どう動く?」
「依頼はリナ令嬢の矜持を汚した彼等への仕返しです。相応の罰を与えるべきです」
ただし、彼等の悪事を暴くだけではダメだわ。
仮に使用人の証言を得たとしても裁判で証言はコロコロ変わる。
「早急に手を打たなくては間に合わないわ」
「慰謝料の支払い期限がある」
「そして腐敗しきった社交界の流れを止める為にも」
私達は本格的に動き始めた。
見てなさいよクソ野郎共!
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