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第一章
4父の涙
しおりを挟む店が閉店となってから話を聞く事になった。
「私達は貴女の娘さんが何の落ち度もないと思っております」
「え…」
「ボロネーゼ伯爵令嬢は品行方正で貞節な令嬢と王宮でも聞いております。むしろ罰せられるべきは元婚約者のフリード・カスケードです」
誰もが彼女を糾弾して、自殺したのも自業自得だと思うだろうが。
「彼女が自殺するような女性ではありません。ご両親を愛しているならば猶の事…納得がいきません」
「はい。娘は自殺するような事は。しかもその日は私達の結婚記念日だったんです。なのに書斎で首を吊るなんて」
結婚記念日に態々そんな真似をするだろうか。
何より彼女が自殺を選んだ事よりも場所が問題だった。
「失礼ながら令嬢は首を吊ったと」
「はい、軽装でした」
調書を盗み見た時に書かれていた内容が妙だった。
「彼女は自殺じゃない。服装、場所もおかしんです」
女性が自殺する時は寝巻や軽装でする事は稀だ。
貧しい家の子供であっても最後はできるだけ綺麗に死ぬ事を選ぶパターンがある。
「女性が自殺を選ぶ場所は寝室が多く、見せしめに復讐するならば何故商会を選んだのでしょうか?」
「それは…」
これは私の憶測だけど。
彼女は商会で見ては行けない何かを見たのかもしれない。
そこで首を絞められた。
自分で首を絞める時にロープに髪の毛が絡まる事もおかしい。
「ご息女とご両親の中が不仲であるならば良さ知らず。それに今回の件では真面な調査がされておりません。明らかに圧力がかかっている可能性があります」
「私もそう思ったのです。ですから調べて貰おうと思ったのですが、慰謝料と損害賠償金を請求されてしまって」
多額の慰謝料と損害賠償金を先に支払らうように告げられた。
「代金はもうお支払ったのですか?」
「それが、カスケードは代金の代わりにある領地を要求されたのです」
お金よりも価値のある土地を奪うのが目的か。
最初から婚約破棄になるのを狙っていたのか、それとも――。
「ボロネーゼ伯爵、弁護士も金を握らせられている可能性が高いです」
「えっ…」
「弁護士と言ってもピンキリでるからね」
お金の為ならどんなこともする人間がいるように、弁護士も例外ではない。
グルで詐欺をしようとしているかもしれない。
「私は娘が幸せになれるならそれでよかったんです」
「ボロネーゼ伯爵」
「私と妻は長い間、子を授かれずにいました。ようやく授かったんです。このままでは娘があまりにも!」
拳を握り涙が零れる。
ボロネーゼ伯爵の本当の願いは復讐じゃない。
「どうされますか?正直、しんどいですよ」
「おい、キャサリン!」
「濡れ衣をかぶせられたご息女自身も苦しむでしょう…何より長期戦になる可能性もある」
これがお金をだまし取られただけならばまだ良い。
既に社交界で傷物になった令嬢の傷は簡単に癒えないのだから。
「時間がかかりますし、屈辱を受けただけに見合う慰謝料できても心は晴れないでしょう」
「かまいません!娘の誇りを傷つけた奴等を私は許せない」
涙を拭いながらしっかりした口調で告げられ、私達は悪人への報復の準備を行う事にした。
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