名乗る程でもありません、ただの女官で正義の代理人です。

ユウ

文字の大きさ
上 下
5 / 19
第一章

4父の涙

しおりを挟む







店が閉店となってから話を聞く事になった。


「私達は貴女の娘さんが何の落ち度もないと思っております」

「え…」

「ボロネーゼ伯爵令嬢は品行方正で貞節な令嬢と王宮でも聞いております。むしろ罰せられるべきは元婚約者のフリード・カスケードです」

誰もが彼女を糾弾して、自殺したのも自業自得だと思うだろうが。


「彼女が自殺するような女性ではありません。ご両親を愛しているならば猶の事…納得がいきません」

「はい。娘は自殺するような事は。しかもその日は私達の結婚記念日だったんです。なのに書斎で首を吊るなんて」


結婚記念日に態々そんな真似をするだろうか。
何より彼女が自殺を選んだ事よりも場所が問題だった。


「失礼ながら令嬢は首を吊ったと」

「はい、軽装でした」


調書を盗み見た時に書かれていた内容が妙だった。


「彼女は自殺じゃない。服装、場所もおかしんです」


女性が自殺する時は寝巻や軽装でする事は稀だ。
貧しい家の子供であっても最後はできるだけ綺麗に死ぬ事を選ぶパターンがある。


「女性が自殺を選ぶ場所は寝室が多く、見せしめに復讐するならば何故商会を選んだのでしょうか?」

「それは…」




これは私の憶測だけど。
彼女は商会で見ては行けない何かを見たのかもしれない。

そこで首を絞められた。
自分で首を絞める時にロープに髪の毛が絡まる事もおかしい。



「ご息女とご両親の中が不仲であるならば良さ知らず。それに今回の件では真面な調査がされておりません。明らかに圧力がかかっている可能性があります」


「私もそう思ったのです。ですから調べて貰おうと思ったのですが、慰謝料と損害賠償金を請求されてしまって」


多額の慰謝料と損害賠償金を先に支払らうように告げられた。


「代金はもうお支払ったのですか?」

「それが、カスケードは代金の代わりにある領地を要求されたのです」


お金よりも価値のある土地を奪うのが目的か。
最初から婚約破棄になるのを狙っていたのか、それとも――。


「ボロネーゼ伯爵、弁護士も金を握らせられている可能性が高いです」

「えっ…」

「弁護士と言ってもピンキリでるからね」


お金の為ならどんなこともする人間がいるように、弁護士も例外ではない。
グルで詐欺をしようとしているかもしれない。


「私は娘が幸せになれるならそれでよかったんです」


「ボロネーゼ伯爵」

「私と妻は長い間、子を授かれずにいました。ようやく授かったんです。このままでは娘があまりにも!」


拳を握り涙が零れる。
ボロネーゼ伯爵の本当の願いは復讐じゃない。


「どうされますか?正直、しんどいですよ」

「おい、キャサリン!」


「濡れ衣をかぶせられたご息女自身も苦しむでしょう…何より長期戦になる可能性もある」


これがお金をだまし取られただけならばまだ良い。
既に社交界で傷物になった令嬢の傷は簡単に癒えないのだから。


「時間がかかりますし、屈辱を受けただけに見合う慰謝料できても心は晴れないでしょう」

「かまいません!娘の誇りを傷つけた奴等を私は許せない」


涙を拭いながらしっかりした口調で告げられ、私達は悪人への報復の準備を行う事にした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

[完結]アタンなんなのって私は私ですが?

シマ
恋愛
私は、ルルーシュ・アーデン男爵令嬢です。底辺の貴族の上、天災で主要産業である農業に大打撃を受けて貧乏な我が家。 我が家は建て直しに家族全員、奔走していたのですが、やっと領地が落ちついて半年振りに学園に登校すると、いきなり婚約破棄だと叫ばれました。 ……嫌がらせ?嫉妬?私が貴女に? さっきから叫ばれておりますが、そもそも貴女の隣の男性は、婚約者じゃありませんけど? 私の婚約者は…… 完結保証 本編7話+その後1話

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)

青空一夏
恋愛
 従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。  だったら、婚約破棄はやめましょう。  ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!  悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!

処理中です...