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第四章
35墓参り
しおりを挟む全てが終わり、私の体調も回復に向かった頃。
私達は祖父のお墓参りに来ていた。
今までのお墓とは違いちゃんとしたものだ。
「義父上、ようやく挨拶ができます」
これまでのお墓はコケで酷くて、ダニアが墓参りも許さなかったとか。
「ちゃんと納骨も収められて良かった…どうか安からに」
「お父様…」
「マリー、長い間苦しめて本当にすまなかった」
「お父様…」
何度も謝ってくださった。
だけど、お父様が悪いわけじゃないのに。
「お父様には好きな方がいらしたのに」
「ああ、だが私は彼女と一緒になるよりも彼女の未来を支えたいと思ってな」
貴族である以上平民と一緒になるのは難しい。
アンリを見ると良く解るわ。
「だが、後悔はしていない」
「お父様」
「彼女は元から体が弱かった。だからこそ私と生きれば長く生きられない…それに悪い事ばかりではなかった。マリーが生まれた」
「私?」
長い間虐げられ苦しんで来たお父様は何時も笑っていらした。
「マリーの名前はお祖母様がつけた名前でもある」
「お祖母様?」
「優しく美しく聡明な女性になって欲しい思いともう一つ。南の国では幸福はマリーと言うんだよ」
私は実母には愛されなかった。
でもそれが何だというのか。
「恵まれ過ぎていますね」
「ああ」
祖父母に深い愛情を注がれ、そして義母にも血がつながらなくとも深い愛情を頂いた。
「お祖父様、ありがとうございます」
これからはここから見守ってください。
私はこれからも過去を忘れることなく生きて行きます。
「そろそろ行きましょう。痺れを切らしているでしょうから」
「ああそうだな。そろそろ戻った方がいいな」
「俺は、戻りたくないがな」
お墓参りだけは私とお父様とアンリだけという配慮だった。
けれど長い時間静かにしているとは言い難く、ランフォード領地にある別邸に戻ると。
「奥さんやるね!」
「まだまだよ。もっと持って来なさい!」
案の定オリアナ様を筆頭にバーベキュー大会が開催されていた。
「何でこんな騒ぎに」
「軽く想像できるな」
「はい、安易に想像できますね」
普通はありえない光景と思うだろうけどオリアナ様だものね。
「もう飲めません…」
「ちょっとだらしないわよ!それでも私の息子なの!」
「そうですよ。だらしないですわ」
エリアナ様。
どんどんオリアナ様に似て来ているわね。
病弱だった頃の儚げな貴女様はもういないですね。
「頭が痛いな…本当に」
頭を抱えるアンリと共に私達の賑やかな輪に加わりながらも楽しい時間を過ごすのだった。
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