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第三章
23アンリとの出会い
しおりを挟む新入生代表となった私だけど居場所を見つけるのは難しかった。
「見て彼女ですって」
「あれが…」
蔑んだような目で見られ、クラスメイトでもヒソヒソ言われていた。
田舎育ちである私を毛色の違う存在として見ていたのだろう。
幸いにも制服はお古を譲って貰えて良かった。
他の貴族院は正装が置かったけど、私はドレスを一着もない。
制服だって無料じゃない。
お金を工面してお父様が私の為に買ってくれたのだから。
王家お膝元であって制服もすごく高い。
席を探すと。
「ここなら空いている。座るなら座ってくれ…迷惑だ」
「はっ…はい。すいません」
「謝るな。おどおどするな鬱陶しい」
「はい」
隣に座る人にじろりと睨まれる。
「とんだ番狂わせだ。俺を負かした首席が君とは」
「え…」
「まさか覚えていないのか?それとも自身が負かした相手など眼中にないのか?」
何とも言えない。
一応覚えてはいるけどなんて返せばよい?
「あっ…あう…」
「おい泣く事はないだろう!」
じわりと涙を浮かべると今度は焦った表情をする。
「ごめなさ…場違いで」
「は?」
「ごめんなさい!ごめんなさい」
「頭を上げろ。別に怒ってない」
私は知らず知らず他人を不快にしてしまう。
お母様とお兄様の言葉が頭に響く。
『マリー、お前は人様に迷惑をかけることしかしないのよ』
『生まれて来てはいけないんだよ!出来損ないが』
私はどうしたらいいの?
「おい、いい加減に顔を上げろ。正直鬱陶しい」
「ごめなさ…」
「謝るな。何でも謝ればいいんじゃ…いやすまない。俺の言葉が悪いのか」
どうしていいか解らない私に彼は困った顔をする。
でもお母様とお兄様のように冷たい視線を向ける事はなかった。
「アンリだ。アンリ・ポーレットだ」
「マリー・ランフォードです」
手を差し差出され私は直ぐに手を引っ込める。
「おい、何で手を引っ込める」
「手が荒れていて汚いですから」
私の手は他の人のように白くてすべすべの手じゃない。
こんな汚い手を見せたくなかったが。
「だから何だ」
「はい?」
「君の努力した手だろう…労働の手だ」
こんな汚い手なのに、彼は私の手を握った。
「汚れを知らない、苦労を知らない手よりもずっと気持ちの良い手だ」
この言葉に私は泣きそうになった。
赤切れだらけの手を馬鹿にされ、見下され否定されて来たのに、彼は優しかった。
私はこんなに優しい男の人をお父様以外で知らなかった。
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