兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします！

序章

3宿泊

王都に行く前に宿に泊りることになった。


「ここは…」

「ああ、私が経営している系列の宿よ」


私の想像する宿はもっと小さいものだったけど、目の前の宿はホテルだった。
高位貴族が利用するような立派な作りだった。


「実はある貴族の別荘を買い取ったの。それでリフォームしたのよ」

「流石母さん」

「外観も中々でしょう？ただ少し不満があるとしたら食事だけど」


中に入るとフットマンが現れる。


「お待ちしておりました会長。どうぞお部屋に」

「お願いね」


随分と立派なフットマンだ。
動き一つ、一つが訓練されているかのようで。


「母さん、あの人は」

「ええ、元は騎士よ」

「拾ったんですか」

「ええ」


まさか元騎士を拾って採用するなんて流石だわ。


「警備員を別で雇うよりも低コストで済むわ」

「なるほど…」

「それに元騎士は使い道はあるしね」


騎士ですら利用するところがすごい。
不審者でも利用できるものは利用するのがお義母様だった。


「さぁ冷めないうちにいただきましょう」

頼んだメニューはコースメニューだった。


「やっぱりね…」

「母さん」


食事はどれも豪華で私達が普段口にできるものではないのだけど。

ただ、ここは山の中なのに海の魚では味は落ちる。


「どうして山の特産物を使わないのかしら」

「え？」

「海の魚は海で食べるのは一番だし、鮮度も落ちます」


逆に山の魚ならばと思うけど、高級なレストランでは海の魚。
特に高級魚を好む。


「それだわ…そうよ。流石マリーちゃん！」

「え？お義母様？」

「母さん、食事中に行儀が悪いですよ」


急に立ち上がるお義母様は給仕係を呼び出しその場を去って行く。


「どうしたのかしら？」

「また何か良からぬことを考えていないか心配だが」


お義母様は商売の事を考えると後先考えられないらしいけど、それだけ仕事に関して情熱を持っている。


そんなお義母様が私は好きだった。


「マリーちゃん！ありがとう」

「だから母さん、騒がないでください」

「私の新しいプロジェクトの突破口が見えた気がするわ」

私の手を握りながら嬉しそうに微笑む。
何かしたつもりはなかったのだけど、ものすごく感謝されてしまった。


そしてこれがすべてのきっかけとなり。
私は後にお義母様の事業のコンサルティングを任されるようになるのはまた別の話だった。