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最終章.自称悪役令嬢の果て
11.父の怒り
しおりを挟む身から出た錆とはとはいえ、エイミーにすべての罪を着せることができて安堵した。
(最後ぐらいは役に立ったわね)
役立たずが最後に役に立ったことを喜んだ。
マリーの悪い噂を流す様に命じたり、貶めるように告げたのはサングリアだったが、実行したエイミーが悪くないとは言えないが、自分だけ安全圏にいるサングリアはとてもずる賢かった。
「侯爵…」
「申し訳ありません。お見苦しい所を」
「いいえ…」
ユーレンは慰めの言葉も思い浮かべなかった。
社交界では冷たいと言われ、実の娘であっても跡継ぎを決める為に娘に笑いかけることもなかった。
人一倍不器用過ぎたのだ。
一時は、マリーを王都から追い出し、現実から目を背けた過去の自分と重なる部分があったので、他人事のようには思えなかった。
「どうか気を…」
「まったく、非常識にも程がありますわね?侯爵様」
「サングリア…」
言葉をかけようとしたユーレンだったが、サングリアが勝ち誇った表情でこれ見よがしにエイミーを悪く言っていた。
「侯爵令嬢としての恥ずべき行為ですわ。姉が妹を苛めるなんて。マリーの悪い噂を流し、アネットさんの教科書を焼却炉に捨てたりしたそうではありませんか」
「サングリア嬢…」
「反省なさいな。貴方のような方がいるから、私達のような…」
「やめないか!」
ぺらぺらと楽しそうに、侮辱の言葉を口にするサングリアを怒鳴りつけ手を振り上げてる。
「きゃあ!」
「公爵様!」
「何ということを…お前は人の心をさえも解らないのか…娘を修道院に送らなければならない父の思いを!彼が傷ついていないと…お前という奴は!」
「おっ…お父様?」
頬を殴られたサングリアは唖然とした。
これまでどんな我儘を言っても娘に手を上げることをしなかった。
女子供に暴力を振るうことは許されないと常に言っていたのだから。
「エイミー嬢はお前の友人だったはずだ。それを庇うこともせずに…何より、アネット嬢に彼女は嫌がらせをしていない。何故焼却炉に私物を入れたことを知っている?」
「それは…」
「アネット嬢に嫌がらせをした…当人しか知らない事を何故知っているんだ」
「それは…人に聞いて…」
「もういい。私を欺くのは止めなさい」
最後の最後まで娘を信じたかったが、これではっきりした。
「サングリア…私はお前の教育を間違えてしまった。こんな性根の腐った娘に育つとは」
「そんな!あんまりですわ!」
「酷いのはどっちだ!実の妹を陥れたり、チャールズを侮辱したり」
学園内での騒ぎはユーレンも知っていたが、改心する事を願っていた。
邸内でもコレットが注意をするも聞く耳を持たず、それどころか、口出しをするなと癇癪を起す始末だった。
「やはりリリアンヌに言う通り、お前を領地から出すべきではなかった」
「お父様!」
「私は間違えてしまった。マリーよりもお前を優先してしまった」
二人の娘を平等に愛しているようで差別をしてしまっていた事に改めて悔やむのだった。
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