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最終章.自称悪役令嬢の果て
9.転落
しおりを挟むルピナス商会は軌道に乗り、これまでのない商会ということで物珍しさで新聞記者にも大きく取り上げられることになった。
一時的に有名な商会は捨てるほどいたので、一部の貴族達は相手にしかなった。
しかし、狂血病を治すだけでなく滋養にいい茶葉や砂糖ではなく甘みを抑えた甘味料等は健康を考える高位貴族に他国の王族が関心を示したことから、売り上げは上昇した。
茶葉や甘味料の箱にも拘り、芸術的センスを持つロザリアに、知識豊富なリーゼリットのおかげで宝石箱のような仕上がりになり、手土産として買い求める貴族も後を絶たなかった。
そのおかげで、多くの女性を雇うことができた。
移民してきた女性の働き口を世話する職業安定所だけでなはなく職業訓練所も作ることもできた。
生まれ育った環境で誰もが武器を持っている視点から見て、農作業が得意な者。
接客業が得意な者に、人のお世話や話し相手になるのが得意な者と多様だったので分野を分けることにした。
そのおかげで下級貴族や商人の家に奉公に行く、家事代行や掃除代行業務を充実させ、仕事は無限にあった。
男性ならば対応できない諸仕事でも女性ならできることは本当に多く、人並みに生活できない女性は今では普通に生活できるまでに至った。
この商売を真似ようとした者はいたが、すべて綿密に計画をして行わずした連中は直ぐに失敗に終わり、逆にマリー達がいかに優秀か見せつける事に至った。
マリーの真似事をして自滅した内の一人もここにいた。
「サングリア様、苦情が来てますわ」
「恋人の代理をした者が、粗相をしたそうです」
「なんて役立たずなの!」
サングリアもマリーの事業に反発して、真似事をした。
本人は真似たとは思っていないが、レンタル恋人なるものをはじめた。
恋人の代理や愛人の代理等を主にしているのだが、代理に選んだのは格安で雇える異国の女性達。
彼女達に詐欺まがいな契約をさせ、給金はほとんど支払わない形で依頼者に恋人の代理をさせたりもしたが、所詮は真似事だった。
真面な研修もないのに、いきなりできるわけもなかった。
サングリアは、見た目だけを重視して選んだ所為で、真面な教育を受けていないこと等考慮しなかった。
「粗相を起こした女は一か月間、減給にするわ」
「ですが、先方様になんとおっしゃいますの?相当お怒りですわ」
「お菓子でも詰めて適当に相手をすればいいわ。相手は下級貴族でしょ?」
極めつけ客に関してもランクを付けていたので、サングリアとエイミーの評価はがた落ちだった。
そして社交界でも二人の傲慢な態度は噂になり、数日後。
「サングリア、今後は商売をしないように」
「エイミー、これ以上私の顔に泥を塗るな」
双方は父親に呼び出され、説教をされるようになる。
特に資産家でもあるスペンサー侯爵は娯楽で商売をすることは許せなかった。
「ですが…ロザリアは!」
「ロザリアは才能がある。モノづくりに関してもだが、芸才は母親譲りだ。対するお前にお前の母親にはそんな才能は一切ない。無駄に金を使って自己満足に商売をして人気取りをしたがっていた程度だ…今回で良く解った」
「そんな!」
これまで娘の教育に関しては距離を保っていた。
ロザリアが虐げられても庇うような真似をしないから、疎んじていたとも思っていたのだが…
「お前達の嫌がらせ程度で潰れるならば、社交界では生きて行けないと思い、突き放したが…ロザリアは母親同様に自分の足で立ち上がった。強い娘だ」
「まったく侯爵殿は鬼ですか。ご自分の娘を」
「仕方ないでしょう?後妻の娘とは立場が悪いのです。万一にでも私が過度に庇えば、さらにロザリアの立場は悪くなる」
(嘘よ…じゃあ!)
最初から父親に試されていた事も気づかず自分で自分の首を絞めることになったが、エイミーはまだ知らなかった。
更なる窮地に追い込まれることになる事を。
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