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第六章.逆行した世界で
4.運命の少女
しおりを挟むジョアンナの指摘に、マリーは落ち込んでいた。
昔から自分に厳しく、他人のも厳しい部分はあっても、認めるべき所は認める懐の深い令嬢であることは知っていた。
だからこそ、余計に落ち込んだ。
「ジョアンナ様は個人的感情で、あんなことは言わない」
サングリアとは仲が良くないことは解っていたが、あそこまで敵視する理由はなんのか。
「私は何かを見落としているのかな…今度こそ皆が幸せになる道を探したかったのに」
マリは―皆が不幸になることはなく幸せになれる方法を探したかった。
だからこそ、アレクシスが本当に結ばれるべき少女が現れた時は潔く身を引くつもりだったが…
「いや、悪役令嬢を研究する前に、運命の少女は何処?」
一番の問題は、サングリアが婚約破棄をされきっかけになった少女のことだった。
「まだ、出会ってないのかしら?私は顔も名前も知らないからどうしよう」
知っているのは並外れた魔力、光の魔力保持者であり、聖魔法を使える唯一の人物。
この国には聖なる光を使える唯一の存在がいる。
聖なる光は強い癒しの力でもあると聞いたことがある。
その少女がアレクシスと結ばれはずだが、王都から離れた領地にいたマリーは詳しくは知らなかった。
「うーん、まだ学園に入ってないのかな?」
現段階では他に好きは人がいるようには見えない。
(もし他に思う人がいたら、私と一緒にいないだろうし)
アレクシスは完璧な王太子殿下と呼ばれているが、かなり解りやすい。
ある程度の事は嫌でも笑顔でそつなくするが、見分けるぐらいはマリーにもできる。
「他に好きな人がいたら、解るだろうし…何より、私もお姉様みたく冷たくされるんじゃないかな」
想像すると悲しくなる。
優しいアレクシスに冷たい態度を取られて平気でいられるだろうか。
「あの気の強いお姉様の心を壊す程だもの…相当だったんだろうな」
品行方正で真面目なアレクシスは理不尽な事は言わない。
ならば、恋がアレクシスの性格を変えてしまったのだりうか?
それともアレクシスの心を奪った少女に問題があったのかは解らない。
「できることなら、その子と仲良くしたいな。そうすれば円満な婚約解消もできるだろうし、誰も不幸にならないわ」
マリーは、ずっと考えていた。
いずれ、アレクシスの為に身を引くことを。
けれど、五年という歳月の中で愛を育てて来た。
小説のような激しい愛情でなくとも、互いに大切に思い合っていると思って言る。
「もし、私が婚約解消されたら…もう陛下にも、王妃様にも会えなくなるのかな?ジョアンナ様も…」
王都に来て出会った大切な人との別れを思うとさらに悲しくなった。
アレクシスとの婚約解消は、大切な友人との別れとも繋がっているのだから。
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