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第四章.魔法学園
19.男達の談話
しおりを挟む結局ランチデートは不発に終わり、何時ものメンバーに邪魔されて残念な結果になった。
「くっ…、こんなつもりではなかったんだ」
侍従に憐れみの表情向けられながら、嘆いていた。
「殿下、残念でしたね」
「はぁー、次の授業は音楽だ。早く移動しなくては」
マリー達とは一旦別れ、教室に戻り次の授業の準備に戻った時だった。
庭園からバイオリンの音色が聞こえた。
「ん?この音は」
「マリー様でしょうか?少し音色が違う様に思えますが」
「ああ、マリーの演奏は明るく清涼感があるが、この音色は優しく悲壮感がある。それにかなりの腕前だ」
マリーのバイオリンの腕前は悪くないが、演奏レベルが違うことがすぐに解る。
「アレクシス?」
「君か、フィリップ」
音楽室前に向かうと、幼少期からの級友のフィリップが現れる。
「次は選択授業だったか…」
「ああ、フィリップ。彼は?」
音楽室で一人バイオリンを演奏している人物の事を尋ねる。
「チャールズ・モーリスだ」
「え?」
「高等部からの入学で特待生に選ばれた優秀な生徒だ。俺と同じクラスだ」
「彼が…」
アレクシスはチャールズと直接会ったことはなく、風の噂でしか知らなかった。
騎士としての才能を持ち合わせながら優れた領主でもあると領民から慕われていると。
ただし、噂とはあてにならないと思っていたが、本人を目の前にして噂は嘘ではないと思った。
「どうしたんだ?」
「くっくく!!そっとしておいてやれよフィル」
笑いを耐えるような声が聞こえ背後を振り返ると、ヒューゴがお腹を抱えていた。
「ヒューゴ…」
恨むような視線を向けるアレクシスは嫌な予感がした。
「どうしたんだ?」
「いやぁ、恋敵が気になって仕方ないんだよ。可愛いじゃないか」
「恋敵?ああ…なるほど」
手をポンと叩き、納得する。
「元婚約者で、マリー様の一番の理解者ですからね?殿下?」
「本当に性格の悪い奴だな!私を馬鹿にしているのか!」
「本当に余裕がないですね。少しは彼を見習ったらどうなんです?」
にやりと笑いながら、さらにアレクシスを苛立たせる。
「彼からすれば、貴女は婚約者を景力で奪いとった悪い男ですけどね?」
「ぐっ!」
「おい、言葉を選べ。チャールズはそんな心の狭い男じゃない」
ヒューゴの失礼極まりない言い方はチャールズ自身を侮辱する言葉と受け取りムッとする。
「おや、意外だな」
「何がだ」
さらに顔を顰める。
ヒューゴが何を言いたいか解らないフィリップは聞き返す。
「君は基本、他人に興味がないだろう?友人だって俺達ぐらいだろう」
「否定はしない。だが、彼は違う。強要高く、貴族として、騎士としての矜持を持っている。あそこまでの男は中々いないさ」
「なるほどね」
人見知りが激しいフィリップはこれまでリーゼリットの件で簡単に人を信用できなくなったが、チャールズだけはすぐに信頼できた。
「俺は彼が好きだ」
「「え!」」
ただし、その思いは憧れと友情に過ぎないが、言葉数の少ないフィリップが意味深な発言をしたことにより二人はおかしな誤解をするんだった。
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