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第四章.魔法学園
8.腹心
しおりを挟む頭の固い貴族達は理想の王妃は聡明で美しいのが当然のように言いながらも、傀儡にすることを望んでいた。
言わば、お飾り王妃を欲していたにすぎない。
そんな王妃など、なんの役に立つのかと、思っているのは騎士団に所属する貴族の考えだった。
王族派の貴族は王家が国を治め、王妃は国の切り札であることを望んでいた。
ただの美しい王妃では、今の世を生き抜くことはできないし、他国と対等に渡り合う事も出来ない。
その理由として貴族派が政治の実権を握るべく寵妃を貴族派の息のかかった令嬢、もしくは他国の姫を嫁がせようと計画していたからだ。
そんな計画を許すわけにも行かなかったが、貴族派を支持するのは王族の分家筋にもいるので迂闊に手が出せなかった。
だからこそ、王太子妃とアレクシスが良好な関係を築くのが一番だった。
とは言え、ジョアンナとの関係は戦友以上にはなりえなかったし、サングリアや他の婚約者候補は論外だった。
孤独なアレクシスの支えになりたくとも、一番大事な時に貴族派が妙な動きを見せたため、一時期王都を離れるのを余儀なくされたヒューゴはしばらくの間アレクシスの傍を離れていた。
その間に王宮で起きた変化には驚いたものだが、新しい風を起こしてくれたことに心から感謝した。
「私も調べましたが、マリー嬢は外交官としての才があります。領地では気難しい貴族や商人の懐に入るのがとても上手いようです。慈善活動も活発に行っていたようです」
「ああ、マリーは才能がある」
「しかも、公爵家では男子に恵まれず、母方の甥に当たる、モーリス侯爵家の次男を婿に迎える為に生まれてすぐに二人は婚約させられたそうですが…マリー様の性格のおかげで両家に摩擦はなかったそうです。普通は何かしら問題が起きるでしょうね」
「モーリス侯爵家か…」
「はい、チャールズ殿は控えめでありながら聡明でありながら少し慎重すぎるお方ですが、マリー様がそこをカバーしているとの噂です」
「二人は…良好な関係だったのか」
「ええ…どうしました?」
今さらになって落ち込むアレクシス。
元は従兄妹関係に当たり、二人の気持ちなど関係なかったが、貴族の婚姻は何処も似たようなものだ。
マリーも義務感で婚約しているだろうとも思った。
「もしや不安なのですか?」
「悪いか?」
マリーがアレクシスを好いていることは解っているが、それでも不安は否めなかった。
何故なら、未だに手を握ってもキス一つしていない関係であるのも不安の一つだった。
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