今日から悪役令嬢になります!~私が溺愛されてどうすんだ!

ユウ

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第三章悪役令嬢の道

30.看病

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リリアンヌとコレットは不在である意味助かったと安堵しながら厨房にて鍋をかき回す。

「お嬢様、果物はどうしましょう」

「リンゴをすりおろして…後は布で包んで絞って」

「かしこまりました」


嘔吐したリーゼリットの体調を見ると、固形物は食べにくいだろうと思い配慮した。

「お嬢様、スープは私が」

「ありがとう。じゃあ、カップにお願い」

かき回していた鍋のスープを他の侍女に頼みカップに注いでもらい、カーゴに乗せていく。

「そうだ、バジル。後で貴方の特性デザートをお願い。貴方の作ったゼリーは絶品だもの」

「かしこまりました」

サンチェスト公爵家のシェフは嬉しそうに微笑みながら返事をし、持ち場に戻り、他の料理人と共にデザートの準備に取り掛かるのだった。




しばらくして…


「失礼します」

部屋で横になっていたリーゼリットを尋ねる。


「お加減はいかがですか?」

「あっ…申し訳ありません。おかげで熱も探しました」


申し訳なさそうに頭を下げるリーゼリットは何処か怯えている。


「アンナ、どうして怯えて…まさか、無理に連れて来たから怯えているとか?」

「いえ、違うかと」


正体面で少し強引に馬車に乗せて邸に連れて行った事がまずかったかとも思ったが。


「あの、まだ胃が受け付けないと思うので…リンゴのすりおろしジュースをどうぞ!」

「ありがとうございます」

グラスを差し出すと、遠慮がちにリンゴジュースを飲み安心した表情になる。


「美味しい」

「それは良かったです」


儚げに微笑むリーゼリットは深窓の令嬢という言葉にふさわしく可憐だった。


「ああ、なんて可愛らしいの」

「お嬢様、失礼ですよ」

「でも、見てよ…あんな麗しい天使が目の前にいるのよ。危ない扉開いたらどうしよう。百合展開になりそう」


前世での事を思い出しながら我に返る。


「リーゼリット様は異国の方ですか?とっても美しい髪に、素敵な色の瞳をお持ちですね」

この国では金髪や赤毛の髪を持つ者はいても、白銀の髪は珍しかった。
しかも青紫の瞳とくれば、かなり稀だった。


黒髪を持つ者も珍しかったのだが…


「この髪がですか?」

「ええ、光に照らすと、真珠のように美しいです」

太陽の光が反射し、きらきらと輝く白銀の髪に見惚れる。

「この髪が…」

「リーゼ」


悪気なく言った言葉は偽りも感じらなかった。

だからなのか余計に、泣きたくなったリーゼリットは涙を流した。

「えっ…私は何か、気に障るようなことを」

「いいえ、違います。違うんです」

泣いているリーゼリットを抱きしめフィリップは僅かに微笑みを浮かべた。

その後も、リーゼリットが泣き止むことはなく。
ただ、困惑するマリーは、二人の様子を見守るしかなかった。


そして夕方前に、二人は帰って行った。



しかし、数日後。


「マリー様!大変です」

「え?どうしたの?」


「あのお二人の身分が解りましたわ…その」

ガタガタ震えるアンナは手紙を差し出す。

「え?リーゼリット様とフィリップ様?」

「はい、お二人の家名を耳にした時に…もしやとも思いましたが」


アンナはその時は親族か遠縁程度にしか思っていなかったのだ。


二人の正体とは…


「あの、ハイネ・スティール様のご子息とご息女です」

「へ?」

「最年少で宰相となったあの方です!華麗なる一族と呼ばれるスティール家でございます!」


偶然とはなんて恐ろしいのだろうか。
王の懐刀と呼ばれるハイネは、国一番の賢者と呼ばれる存在だった。

そして、その妻は美しく聡明で社交界でも人気だった。
結婚する間では多くの男性から求婚され、他国の王族からも結婚を申し込まれる程の美貌を持つ女性だった。


辺境貴族出身のマリーはお目にかかる機会はまずなかった。


「これ、まずくない?」

「ええ、奥様にバレたら」

「また正座じゃない!」


リリアンヌの般若の如く怒る表情が想像できてしまうマリーは冷や汗を流すのだった。


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