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第三章悪役令嬢の道
29.美しい兄と妹
しおりを挟む真っ青な表情をする少女に携帯している使い捨てのおしぼりを差し出す。
「あっ…あの」
「顔色が悪いので、これで頭を冷やしてください」
今日は少し日差しが強く、表情を見ると、軽い熱中症が見られた。
「あの…ゴホッ!」
傍で支えるマリーに嘔吐してしまい、服が汚れてしまう。
「あっ…私…」
ガタガタと震える少女は、とんでもない事をしてしまったと怯えてしまう。
「リーゼ!」
傍にいる少年は急いでハンカチを取り出し、謝罪しようとするも。
「大丈夫ですよ、こんなのお洗濯すればいいし…それにそろそろ脱ぐ予定だったんで」
「えっ…は?」
「着替えも持ってきているんで」
キョトンとする二人に、さっきまで悪意をぶつけていた客も訳の分からない顔をする中、にっこりと微笑みワンピースを脱ぎ捨てた。
「秘儀・大変身」
バサッと、ワンピースを脱ぎ捨てると、軽装なパンツスタイルに早変わりする。
「おっ…お嬢様!」
「すごくない?この仕掛け…私のお気に入りなんだ」
ワンピースの下に来ていたズボンに、ワイシャツも首元のリボンを解けば別の服装に変わる仕組みになっていた。
「さぁ、綺麗なお嬢様…どうぞ」
そう言いながら鞄から上着を取り出し、肩にかける。
「お嬢様…」
「アンナ、すぐに馬車の用意をして。今すぐに」
「はっ…はい!」
何か言いたげな表情をするも、強い口調で命じるマリーに従わざるを得なかったアンナは急いで馬車を用意した。
「さぁ、お乗りになって」
「えっ…あの」
本屋の前に馬車が到着すると、二人は戸惑いを見せるが有無を言わせない表情で馬車に乗るように促す。
隊長の悪い妹を思って、少年は一瞬だけ考え込むも。
マリーが貴族の娘であることや、自分達に害を与えることはないと判断し、同意した。
「あの…」
「顔色が悪いから横になった方が良いですよ。寝心地はあまりよくないですがどうぞ」
ポンポンと膝を叩き、クッションを用意するとさらに驚く。
「お嬢様、失礼ですよ」
流石にやり過ぎだと思ったアンナが注意をし、飲み物を用意する。
「申し訳ありません。主は悪気がなく…」
「いえ、助かりました。私はフィリップ・スティールと申します。こっちは妹のリーゼリッタでございます。この度はご配慮をいただきありがとうございます」
「ご兄妹そろってお美しいですね…」
「お嬢様」
ポーッと見惚れる、マリーに咳ばらいをしながらアンナは注意をする。
「あっ…いえ、マリー・サンチェストでございます」
うっかり礼儀を欠いてしまった事に気づき急いで挨拶をする。
「このまま我が家に向かいますが、両親は不在ですので、どうかお気になさらないでください」
「何から何まで申し訳ありません」
程なくして馬車は邸の前に到着し、使用人の数名が迎えた。
「お嬢様、そちらの方は?」
「私の友人よ。体調を崩されたようなので、お部屋に案内案内して差し上げて」
「かしこまりました」
数名の使用人達は詳しい事情を聴くことなく二人を案内したのだった。
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