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第三章悪役令嬢の道
26.当主として
しおりを挟む従兄妹であるチャールズは自分の立場を理解していた。
マリーが公爵家を継ぐのは幼少期から暗黙の了解だったので、補佐的な役回りをすることに徹底していた。
後に結婚してもマリーをお飾りにする気はなかったし、マリーの立場を守る為にもでしゃばることはなかった。
それはチャールズが自分の立場を弁えていたからだ。
とは言え、周りからどう見られているか解らないわけではない。
入り婿であることを馬鹿にする声。
王都から追い出された出来損ないの従兄妹を上手く利用した等と悪口を言われてきた。
そんな立場にありながらもマリーを守ってくれたチャールズにユーレンは感謝していた。
「私はチャーリーに領主としての器が十分にあると思っている」
「はい…チャーリーは私なんかよりもずっと優秀なんです。容量も良いし、領民の皆さんから慕われてて…私がなんとかやって行けたのはチャーリーがいたからです」
「マリー」
リリアンヌはチャールズをここまで慕ってくれるマリーの気持ちが嬉しかった。
婚約者で無くなろうとも、兄として慕う思いは健在だったのだ。
「ああ、私もだよ。チャーリーは本当に素晴らしい。サングリアが我儘を言っても根気強く面倒を見てくれている…だが、サングリアに問題があってね」
「お姉様?」
「ああ、使用人と上手く信頼関係が築けないみたいでね。このままではサングリアの立場も悪くなる。だからこそチャーリーを正当な跡継ぎにしたい」
「ですがお兄様、そんなことをしたら…サングリアはどうなりますの?」
サングリア本人は自分が公爵家を継ぐと思っている。
「私はあの子に、あくまで領地代行の器がなく、資格がなければ認められないと言っているし…チャーリーを補佐することは悪い事じゃないはずだ。何よりあの子には荷が重すぎたのかもしれない」
「私も同感ですわ」
「お義お姉様まで…」
コレットも思う所があった。
チャールズには本当に申し訳ない事をしてしまっていると。
「婚約の事もそうだが…見直すことも視野に入れるつもりだ」
「え?お姉様とチャーリーを?」
「ああ、こういっては何だが、サングリアと結婚しろと言うのは酷なような気がしてね?マリーと同じように二人が愛を育めたならば別だが…どうにも相性が悪い」
しっかり者で兄体質のチャールズはマリーとは相性が良かったが自尊心が強すぎるサングリアとは相性が悪かった。
「まぁ、まだ見守り中だがね」
「お姉様はチャーリーがお嫌いなのかしら?優しくて聡明で、気遣いができて強くて素敵なのに。あんな素敵な男性いないわ」
「こらこら、君は殿下の婚約者なんだよ」
他の男を褒めちぎるマリーを咎めるも、マリーの中でチャーリーの評価は健在だった。
「殿下も素敵なんですよ」
「くれぐれも殿下の前に言うんじゃないよ?落ち込むから」
「はい」
マリーもその辺は心掛けているが、いざチャールズがアレクシスと接触したら大変だろうな?と思ったユーレンだった。
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