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第三章悪役令嬢の道
4.迷子の先で
しおりを挟む王家直系の血筋を持ち、貴族の間で財は国一番と言っても過言ではなく。
銀行業をしているノルマディア家。
一族は優秀で、成人する前から事業をする程の有能さを持っていた。
その中でも特に優秀だったのが、ジョアンナ・ノルマディアだった。
未来の女帝と呼ばれるほどの堂々とした佇まいに、美しい所作と知的さを兼ね備えている。
未だ成人前でマリーと同い年であるのに、月とスッポンの差だった。
まさしく薔薇のように気高くも誇り高い姫君だった。
「見て、ジョアンナ様よ」
「なんて美しいのかしら」
彼女が歩けば、大勢の人が道を空ける。
「すごいわ!モーセよ!」
「マリー、モーセとは何ですの?」
「異国の神様です!海が割れて道ができるんです!潮がひいた際に道ができる的な」
顔を引きつらせるリリアンヌ。
無礼すぎると思ったが、ここで大声を上げることはできないので睨む。
「マリー…」
「それにしても、オーラがビンビンですごいですね」
「お願いだから問題だけは起こさないようにね」
リリアンヌは隠れて胃薬を飲みながら呼吸を整える。
何もなければいいが、マリーがこれまで起こした問題を思い出すと胃が痛くて仕方ない。
「とにかく、マリー?」
隣を見るとマリーの姿はなかった。
リリアンヌは胃を押さえながら、今日もストレスと戦っていた。
一方、その頃マリーは。
「あら?叔母様は何処に?」
リリアンヌにはぐれてしまっていた。
「迷子になったのかしら?仕方ないわね」
リリアンヌが勝手にいなくなったのだと思いながら、歩きながら探そうとしていると。
「困りますわ」
「いいではありませんか」
前方に一人の令嬢にしつこく迫る貴族令息がいた。
明らかに嫌がっているように見えて、マリーは携帯している悪役令嬢の教本を片手に前に踏み込んだ。
「お待ちさない、そちらの方は私とお約束がありますのよ!」
「は?」
いきなり現れて邪魔された貴族令息は睨まれるもマリーは、悪役令嬢としてふるまうべく必死で立ち向かう。
「私を誰だと思って…」
睨みつけられ一瞬怯みそうになる。
慎重さもあってすごまれ少しだけ怯えてしまったが、真の悪役令嬢を目指すべく怯えながらも言い放つ。
「存じませんわ」
「は?」
堂々と言われて令息は素っ頓狂な声を出した。
「何方かは存じませんが、そちらの方は私とお約束がありますのよ?それに女性を困らせるなんて紳士の風上にも置けませんわ」
扇を手に取りながらこっとりカンペを取り出しながら台本を読むようにして告げる。
自分なりにもまぁまぁの出来ではないかとも思っていた。
「私は王太子殿下の婚約者ですわ!何か文句でもありますの!」
しかし、マリーは知らなかった。
完璧な悪役令嬢として相手を権力でねじ伏せるような言い回しをしながらも、表情はまったく悪役令嬢とは程遠く、相手の男性も敵対心どころか、子供が精いっぱい背伸びをして子供を見るような視線を向けながら、その場を去って行った事に、まったく気づいていなかった。
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