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第二章もう一つのルート

22.大騒ぎ

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衝撃の事実に驚く貴族達だったが、前例があったので反対の声はそこまで大きくなかった。


何故なら型破りな王は王太子時代に、情熱的な愛の告白を王妃にしていた。
しかも歴代の王は側妃を持っていたのに、アスランは王妃以外の女性には眼中になかった。


なので王太子が情熱家でも不思議はない。


「流石我が子ながら、情熱的だな」

「陛下、私は殿下のようになっていただきたくのないですが」

侍従は胃を押さえながら切に願う。
二代に続いて、自由過ぎる王なんていたらストレスで死んでしまうのではとも思ったのだが。


「ははっ!細かいことは気にするな」

「全然細かくないのですがね、他の婚約者候補の令嬢に睨まれたらどうするのです」

「だが、隠していてもいつかバレるだろう!こうなったらマリーに他の令嬢を誑し込んでもらおうではないか!そうすれば丸く収まるだろう!」

本人に悪気は一切ないが、言い方に問題があるだろと心の中で突っ込む側近達。

「なんとか言ってください」

頼みの綱は王妃だと誰もが思ったが。


「素敵ですわ陛下」

「王妃殿下…」


これまで唯一、アスランの暴走を止められる常識人と思っていたのに裏切られた気分だった。


「マリーは他人を誑し込む天性の素質がありますわ」

「それは貶しているのですか?褒めているのですか?」

「もちろん後者ですわ。いいですか、他人の懐に飛び込むことは安易ではございませんわ。特に高位貴族となればかなり難しいのです…ですが、マリーにはそれができますわ」


否定ができない一同は何とも言えない。
何故なら、王宮でも孤立しかけていたアレクシスの心を簡単に開かせ、病魔に苦しみ心を閉ざした王妃の心をまでも掴んでしまった実績は疑いようがない。


「王妃としての器はまだまだ足りません。今のままではいけませんが…マリーは聡明ですから今から訓練すればよいのです。無理だとしても彼女にはカリスマ性があります」

「カリスマ性ですか…」

「ええ、リーダーシップを取れますわ」


王妃として必要なスキルは、今のマリーにはない。
為政者としての腹黒さにずる賢さも足りない状況であるが、交渉手段に優れ。

尚且つ柔軟な思考を持つマリーは裏工作などしなくても相手の心を掴み、尚且つ味方につけることもできるおではないか?とも思った。


「見せかけだけの同盟ではなく、心と心が繋がった同盟を結ぶには心です。そして真の女王たるもの、この方を支えたい、お守りしたいという気持ちを抱かせなくてはなりませんわ」

「うむ、現段階では騎士団を骨抜きしておるからな!」

「そうですわ。既に騎士団を誘惑しているのですから恐ろしいですわ」

二人は決して貶しているわけではないと解っているのだが、褒めているように聞こえない侍従達は口を挟むことがきでなかった。



こうして側近達の不安と、敵対する貴族の憎悪の視線を受けながらもパーティーは終わり。


後に婚約式が執り行われ、マリーは正式に王太子殿下の婚約者として国内に知れ渡ることになった。


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