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第二章もう一つのルート
20.愛せない理由
しおりを挟む領地代行の兼は見守ろうとし思ったチャールズは近況報告として手紙を出した。
色々省略はしたが、サングリアの教育は根気よく行うことを書いたが、その一方で思うことがある。
「俺は領主代行は認めても、婚約者になる気はない」
「チャールズ様?」
「もし、サングリアに器があるなら、公爵家を出ようと思う」
手紙を書きながら告げる。
「きっと、伯父上は怒るだろう。だが…これだけは譲れない」
「解っております」
使用人達は痛々しそうに見つめた。
チャールズは公爵家の為に我慢を強いられても文句ひとつ言わずにいた。
だからこれぐらいの我儘は許されるのではないか?
「俺はマリーに恋愛感情はなくとも愛していた。一生守ると決めたんだ」
拳を握りながら窓から空を見上げる。
「マリーは俺を慕ってくれた。俺もマリーが可愛かった」
恋人のような関係ではなくとも、支えあって生きて来た。
だから、ずっと一緒にいる約束をした。
「なのに、マリーを悪く言うサングリアを愛せるか…彼女が少しでもマリーを思いやってくれていたなら伴侶として受け入れる事ができるだろうが」
口を開けばマリーの悪口ばかり言うサングリアを受け入れるなんてできない。
今のままでは婚約者として接することはできないし、従兄妹としても支える気にもなれないのだった。
「今のままなら俺は降りる」
「ええ…私達もお仕えできませんわ」
「はい」
貴族同士の婚姻は利益の追求だった。
モーリス侯爵家はサンチェスト公爵家を支える事を誓っているが、サングリアを信用しているわけではない。
婚約解消だって正当な理由を突きつければ可能だし、慰謝料を払ってでも婚約を断ることも考えている。
「俺は自分の役目から逃げる気はない。サングリア自身が心を入れ替えれば、俺も努力するつもりだ」
「チャールズ様…」
努力しなければ受け入れられない事実に気づかないチャールズがあまりに不憫でないと使用人達は思った。
同時に、サングリアに対する愛情は全くないのでは?とも気づき始めた彼らは悲しくなった。
「今さら言っても仕方ないのですが…」
「神様は残酷でございます」
どうして、思いあっている二人を引き離し、王太子妃として戦地に赴かせるような真似をしたのだろうか。
優しく甘えん坊なマリーは魔の巣窟と呼ばれる王宮で生きるのはあまりにも残酷すぎるのだと思ったのだった。
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