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第二章もう一つのルート
17.不満
しおりを挟むマリーが本格的にお妃教育を始めると同時に、サングリアの領地経営としての勉強が開始された。
とは言え、基本が理解できていないので、基礎を固めることから始めた。
最初は執事長も侍女長も誠心誠意を持って接していた。
どんな理由があっても、公爵家の意向を受け入れるつもりでいたが。
「何これ」
「朝食でございます」
「朝食前にショコラを下さる?」
「申し訳ありませんが、領地ではそのようなものは…」
まず朝食から文句のオンパレードだった。
やれ、田舎の食事は口に合わないと文句を言い始める。
お茶から始まり前菜にも注文が多かった、そして下級貴族出身の侍女に対しても見下すような言葉を言い放つ。
「サングリア様、上の立場に立つ方の言葉ではありません」
「使用人の分際で私に意見する気…いくらマリーが許しているとはいえ」
「は?」
「あの子は公爵令嬢としてあるまじき行為をしているのね…本当ねにダメな子ね」
あんまりにも傲慢すぎるサングリアに対して侍女長が咎めるも、使用人が口を出すなんてあるまじきことだと言い始め、最終的にはマリーが悪いのだと言い出す始末。
「主と使用人を同列なんて、いくら子供でもありえないわ」
「マリー様はちゃんとわきまえておられます」
「黙りなさい。使用人が主に逆らうなんて身の程をわきまえなさい」
公爵令嬢として常に堂々と、気高くあるようにとしつけられてきたサングリアは厳しい言い方をする。
ただし、気高く堂々とふるまうのと傲慢で高飛車に振舞うのは同じではない。
侍女長の言うように、領主は常に領民に気を配らなくてはならない。
自分の軽はずみな言動一つで、領民の命を奪うことができるのだった。
だからマリーは領民に優しく接した。
とは言え甘い顔ばかりするのではなく自分なりに考えて、間違ったときは注意してほしいと侍女長にも言っていた。
なのに、サングリアは身分をひけらかし、既に主気取りだった。
「マリー様は幼いながらに領主としての役目を果たされていました」
「別にあの子に気を使わなくてもいいわ。これからは私が主なのだから」
「少なくとも、サングリア様よりも領主の器をお持ちでしたわ」
「なっ!」
最初こそは黙っていたが幼少期からわが子のように愛情を持って育ててきた、マリーを侮辱する行為は許せなかった。
だから言い返したのだ。
たとえ、罰を受けても構わないと思った。
他の使用人も同じような視線を向けられ、サングリアはいら立ちながら睨みつけた。
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