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第二章もう一つのルート

11.愛の頭突き

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最近、マリーの顔を見ていいないアレクシスはそわそわしていた。


「マリーは何処にいるんだ」

「今はマナーレッスンでして」

「おかしいじゃないか?」

王宮内にいるのにマリーの声が聞こえない。
数日前までは王室家庭教師の悲鳴が聞こえていたのに、最近は静かだった。

いくら室内と言えど、度々問題を起こすマリーを知る身としては静かすぎる。


「何を隠している。最近は父上も脱走をしないし」

「そっ、それは…」

侍従や侍女は、幼いながらに聡明なアレクシスを騙し続けるのは不可能だと思っていた。



そんな中…


「お嬢様、いい加減お休みください」

「大丈夫…」


廊下の方ではヘロヘロになったマリーを見てアレクシスは直ぐに駆け寄った。

「殿下!」

「お待ちください!」


何時も桜色の頬が死んだ魚のような肌になり。
瞳はん朦朧としていて、病人のようで、気が気でなかった。


「マリー、どうしたんだ…何だ?その格好は」

メイド服を着ているマリーに驚きながらも手に持っている籠の中には薬草とタオルが入っていた。


「何でそんな物を…」


「ごきげんよう殿下」

普段の元気がない。
側にいる侍女も疲れた表情をしているのを見るが、何も答えようとしない。


「最近、何処にいたんだ」

「王宮内にいました」

「何処にいた…」


王宮内にいたことは応えるも、何処にいたかは応えない。


「母上の所か?」

「え…」

「君の肩についていたこの花だ」


王宮内の庭園には咲いていない白いマーガレットの花びらを見せる。

これは王妃の離宮にしか咲いてなかった。


「何故君が、母上の看病をしているんだ」

「私から言い出したんです」

「母上の病気は、治らない‥医師もそう言っている」


突き放すような言葉だった。
アレクシスはマリーの目を見ない言っていた。

「医師がいったから?」

「そうだ、今までどんな名医も助けるのは難しいと言われた。だからせめて心穏やかに暮らしていただくのが一番だと」


まるで自分に言い聞かせる様な言葉だった。

無理だと自分に言い聞かせているようだった。


「医者に言われたら諦めるんですか…そんな簡単に諦めるなんて情けない男」

「なっ!」

「お嬢様!」


過労も、寝不足も吹き飛ぶようだった。
それ程恐ろしい言葉を口にしているマリーだが、言わずにいれなかった。

「私の祖父は祖母が不治の病と聞かされても、医師に見放されても一度だって諦めませんでした」

「だが‥」

「領地で流行り病が流行った時も、大飢饉になった時も祖父は自分から諦めませんでした。上に立つ者が妥協してしまえば、その下にいる民がどうなるか解っているから…母親が死にかかってるのに何でそんな簡単に諦められるの…ふざけんな!」


不敬罪なんてクソくらえだと思ったマリーはアレクシスの胸ぐらを掴み罵倒した。


「お止めくださいお嬢様…無礼な!」

「打ち首でもギロチンでもしろ!このへなちょこ王子!」

「うっ!」


マリーは自分の頭を振り上げ、アレクシスの頭にぶつけた。



もう終わった。
周りの使用人は最悪事態になったと絶望した。


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