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第二章もう一つのルート
10.病魔との戦い
しおりを挟むその日からマリーの戦いは始まった。
昼夜問わず、王妃を看病し、時には体を清潔に保つために清拭をしたり、体温を温めたりと休む時間はなかった。
王妃付きの侍女は休暇を与え、ルイーザが代わりに診ると言う事で争いは起きなかった。
「マリーはずっと休まずに看病しているなんて」
「これでは体を壊してしまうわ…でも、私達にできるのは薬草の手配と食材の調達だけですもの」
リリアンヌとコレットも協力してできることをしていた。
「医師も確保していますが、食事を取らない以上は厳しいそうです」
「ああ、後は祈るしかできないなんて」
二人は歯がゆい気持ちだった。
そこに、侍女が手紙を持って来た。
「あの…領地から手紙が」
「そんなもの読む余裕はありません!」
「状況を考えなさい!」
切羽詰まっている二人は空気を読まない侍女を怒鳴った。
「この非常時に!」
「夫にすべて任せましたわ。今はマリーのサポートをします」
二人の心は一つだった。
今はマリーの支えになり、王妃を救う事だけに専念していた。
しばらくして扉が開く。
「お母様、叔母様…新しい枕を」
「マリー、少し休みなさい」
顔色の悪いマリーを見て休むように告げるが、首を横に振る。
「王妃様は水も飲めず苦しんでいるんです。夢の中で泣いていました」
「ああ…なんてこと」
「一日でも早く苦しみを取ってあげたいんです」
マリーの直向き思いに、二人は胸が苦しくなる。
幼い娘がこんなに頑張っているのに、自分達は何もできないなんて許せない。
「薬草の追加を」
「私も探してきますわ」
今はできる事をしなくてならない。
祈って待っているなんてできないと思った二人は薬草を求めて出て行った。
「マリーよ、王妃は…」
「少しづつですが意識がハッキリしているように思えます。殿下の名を呼んでいます」
「そうか…」
弱音を絶対に吐かないアスランは気を抜けば泣いてしまいそうになっていた。
「やはりアレクシスにも伝えてはどうだ?」
「まだ意識がはっきりしてません。ご本人も病気を移したくないと拒んでいるんです」
「しかし、医師の見立てでは感染する病ではないと…」
「はい」
今まで診て貰っていた医師とは別にリリアンヌが手配した医師の判断では感染する病ではなかった。
だが、本人が病を移してしまうのではという恐怖がある為、面会が出来なかった。
「せめてもう少し意識がはっきりするまで…」
「そうか、すまん」
ここで弱音を吐いてはダメだと解っているが、何もできない無力な自分が憎かった。
「しかしマリー、これ以上無理はせんでくれ」
「パパ…」
「マリーまで倒れたら、私は耐えられん」
アスランは愛しい妻だけでなく可愛い義娘まで病に倒れてしまったらと思うと恐ろしかったのだった。
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