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第一章逆行した世界
5.引っ越し
しおりを挟む急ピッチで引っ越しの準備は整えられた。
元から荷物は少ないので、必要最低限でいいので直ぐに済んだ。
「本当に行ってしまうのですね」
「叔母様!ちょくちょく帰ってきます!」
「いや、そんなに頻繁に帰ってこれるのか?」
寂しそうにするリリアンヌに元気よく返事をするマリーに呆れるしかないチャールズ。
「大丈夫です、無事に婚約解消して来ますから!」
「婚約解消したら意味だからな?本当に解っているのか!」
チャールズは嘆いた。
頭のネジが緩いマリーは色々と考えがぶっ飛んでいる。
王太子の婚約者に選ばれた以上は、婚約者として振る舞う努力をするのだが、マリーの頑張り所は間違えているような気がする。
「大丈夫です!円満に婚約解消して来ます」
「そうなったら君の今後が…」
「その時は出家するか辺境地で農民になります」
「「農民…」」
公爵令嬢がの農民なんてありえないとも思ったが、領地はかなりの田舎だったの畑仕事を進んで手伝っていたのでありえないわけではない。
寧ろやりそうだと思った。
「マリー、くれぐれも粗相がないようにするのですよ」
「はい」
「貴族令嬢がガッツポーズはしない。腕を捲るんじゃない!」
どや顔をするマリーに二人はたまらなく不安を抱く。
本当に王宮でやっていけるのだろうか?
平凡なマリーには王太子妃の肩書は重いだけに感じる。
万一に出も他の王侯貴族に嫌がらせを受けた時、回避できるだろうか。
考えればキリがない。
「じゃあ、いってきまーす!」
「遠足じゃないだぞ」
「たまらなく不安だわ。幸いな事に私も王都に同行できることですわ」
いきなり一人で王都で生活するのは不安だろうし、王宮でお妃教育を受ける時もごり押しで同行させるように脅したリリアンヌだった。
チャールズも数年後には王都の王立学園に通う予定だった。
彼曰く、マリーを一人にすれば何をしでかすか解らない為だった。
「本当に大丈夫だろうか」
「チャールズ様、お嬢様ならば大丈夫です」
「お前の自信はどこから来るんだ、ノイマン」
唯一冷静だったのは、サンチェスト公爵に仕える執事長ぐらいだった。
こうして、正式に王都の別邸に移り住むことが決まったマリーは領地を惜しみながら国境を越えて、邸に到着した。
「いらっしゃい、よく来てくれましたね」
「ご無沙汰しておりますお義姉様」
「マリーを見てくれて本当にありがとう…お転婆で大変だったでしょう」
サンチェスト公爵家に到着して早々に手厚く出迎えられ、リリアンヌは礼を尽くした。
傍にはサングリアもいる。
「この度は驚きましたわ。急でしたので…マリーに関しては大変とは思っておりませんわ。息子とも仲睦まじく過ごしておりましたので」
「そう…」
申し訳なさそうにするコレットと気まずそうな表情をするサングリアに顔を顰める。
「本来ならば、このような我儘は許されませんのに」
「ごめんなさいね」
「私に謝っていただく必要はございません。ただ、公爵家の継承に関してはサングリアにその資格があるか試させていただきます。ただ優秀なだけでは領主は務まりません…いいですね」
「はい、必ずご期待に応えて見せますわ」
殺伐とした空気が流れる中、二人共譲らないでいた。
「叔母様、長旅で疲れたでしょう?お茶にしましょう!」
「マリー…」
「私、お腹空きました!」
しかし、空気を読まないマリーは殺伐とした空気を一瞬にして壊した。
この時ばかりはコレットもマリーに感謝して笑みを浮かべるのだった。
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