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第四章幸福と不幸は紙一重
26.愚弟の報告
しおりを挟むその頃アントニアの元に一通に手紙が送られえて来た。
「何てことを!」
手紙にはアイシャ達がアーデルハイドのいる島に押しかけて色々やらかしたと書かれていた。
「なんて恥知らずな真似を!」
「アニー、どうしたんだ」
「貴方…モーギュスト達が」
真っ青になるアントニアをジュードが心配しながら声をかける。
「こちらを」
震えた手で手紙を見せられ、すぐに表情が険しくなる。
「あの馬鹿は!」
手紙を握りしめるジュードはこれ以上無いほど怒っていた。
「アニーの好意をどれだけ踏みにじれば気が済むんだ」
「私のことは良いのです。なんて真似を…外交問題にはならないでしょうが…」
アントニアが一番心配しているのはアーデルハイドの事だった。
既に別の人生を歩んでいるのに、邪魔をするような真似をするなんて正気の沙汰とは思えなかった。
「王妃陛下の情けを踏みにじるとは…これでは庇えないぞ」
「既に邸は売り払ったようですわ…馬鹿だと思いましたが、ここまで馬鹿だとは」
名義は、モーギュストの物となっているので、売ることは可能だが、家を無くせば住む場所はないだろう。
ジュードは、どれだけアントニアが気に病んでいるか理解していないモーギュストに怒りしかなかった。
「本来ならば支援する義理はない。それだけの事をやらかしたんだ…なのにあの馬鹿は!」
「貴方…」
「アントニア、これ以上、あれを庇う事はできない」
口では厳しい事を言い、突き放すような事を言っていたアントニアであるが、懐が深く、悪しざまに扱われても見放すことをしなかったアントニアには感謝している。
だが。これ以上は我慢できない。
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「貴方、でも!」
「ああ、そうなれば罪人扱いになるだろう。貧民街にて放り出されるか、辺境地で永久労働を強いられ、二度との日の当たる場所に戻ることはできないだろう」
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縁を切っても、心を入れ替えてくれたらと…心のどこかで思っていた自分を後悔する。
「せめて、アーデルハイド嬢に何もなければいいのだが」
「ええ」
二人は互いに抱き合いながら、海の向こう側にいるアーデルハイドの無事を願いながら祈りを捧げるのだった。
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