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第四章幸福と不幸は紙一重
19.骸骨集団
しおりを挟む地獄烏を飛ばすほど急いでいたサクラは一息つく。
「馬鹿よりも先回りして良かったよ。、まぁ、今さら手が出せるとは思わないけどね」
「サクラ伯母様…」
「だが、悪知恵は働くからね?島の子供や老人を人質にして、無体な真似をする可能性も考えて急いで手をまわしておいた。勿論、私の使い魔も護衛に向かわせたから病院は大丈夫だよ」
「使い魔って…」
サクラは北の魔女だった。
北の領地は寒さに耐える猛獣が住まう地でもある。
特にサクラの傍にいる使い魔はグリフォンやドラゴンと言った危険な獣が多かった。
「ああ、心配ないよ?いくら何でもグリフォンなんて放ったら驚くだろう?」
「地獄鳥でも十分驚きますけどね!」
「本当に情けない男だね?ハイジの邸にはチーがいるから、後はゴーレムを置いて来たから大丈夫だよ。念のためにケルベロスも置いて来た」
「全然安心できませんがね!」
フレディーはサクラの非常識さに絶望した。
いくら辺境地で野生の動物に見慣れているとはいえ、危険だと思った。
「大丈夫だよ?仮の姿にしてあるから…それにあの子達は害のない人間には大人しいからね?ただ、あの家族達を見たら興奮してしまうけど」
「それって…まずいんじゃないかい?」
「大丈夫だよ。偶然遭遇しても首を食いちぎるとか、内臓をえぐるぐらいさ」
笑顔で言うサクラに対して誰も笑えなかった。
「私だったら裸で引きずって生皮剥いで、そのままサメの餌にしてやるけどね」
(((本当の悪魔だ!)))
魔獣の方がよほど可愛いと思えた程だった。
「さてと、そろそろ私の可愛い子達が、馬鹿共を捕まえに行っているだろうよ」
「可愛い子?」
アーデルハイドが訪ねるや否や、馬車がこちらに向かってきた。
「えっ?何だ?」
「ちょっとあの馬車、おかしくないか!」
「それ以前にあの御者…スケルトンじゃないか!」
服装は御者らしかったが顔は骸骨だった。
馬車を引く馬も骸骨で骸骨尽くしで、驚くなという方が無理がある。
「ひっ…ひぃぃ!!」
「ちょっと!情けない声を出すんじゃないよジャン!」
「のっ…呪われる!私は殺されるんだ!」
「俺もできれば見たくないんだが」
馬車から誰かが出てくると思ったが、ここまでくれば人ではないのは確実だろう。
「今すぐ去りたい」
「俺もだ…」
ガタガタと震えながら抱きしめあうジャンとペトロ。
彼は決して気弱ではなく、気丈夫であるが。
北の魔女を前にして勇敢に立ち向かえる人間などいるはずがなかった。
見たくないと思いながらも馬車から出てくる何かを見ると…
馬車から放り出されたのは芋虫のようになってしまった四人。
元家族だった。
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