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第四章幸福と不幸は紙一重
17.事後報告
しおりを挟むフレディーはアーデルハイドの家庭環境があまり良いものではないのはフレイアに聞かされていたが、ここまで酷いと思っていなかったので、どうしたものかと考えた。
「ハイジ、君が望むなら彼等を不法侵入者として捕らえ国に訴える事もできる」
「いいえ、どのようなことをしたら、王妃陛下に迷惑がかかります」
勝手に国を出て、この島に来たのはアイシャ達だった。
本来ならば、身分剥奪だけで済まなかった罪に情けをかけてくれたのに、その好意まで踏みつぶすような真似なんてできるはずもない。
「ハイジちゃん、このまま野放しにする方が厄介だよ」
「害虫は野放しにせず、駆除すべきだ。私も、フレディーと同じ意見だ」
「伯爵様の言う通りだ姫さん。あいつ等は屑だ。奥方様を侮辱し、姫さんまでも侮辱し、甘い汁だけ吸ったハイエナ以下だ…野放しにすればどうなるか」
やっと穏やかな暮らしを手に入れ、結婚もして幸せになっているアーデルハイドがまた、昔のように耐え続けるのを見たくなかった。
「縁を切っても、無駄なんて…どうしたらいいかしら」
「今、レイジさんとフレイアを呼んでいる」
「は?ステラ…お前はなんて危険な奴を!」
レイジはまだいいが、フレイアなんて呼べばさらに状況は悪化するのが目に見えている。
むしろ、事態は最悪な方向に進むだろう。
「まぁ、怒り狂ってしまうだろうね?」
「解っていたのなら…」
「だからだろ?あの子はハイジちゃんの大事な親友だ。蚊帳の外なんて可哀そうだろう?それに後から知ったら余計怒るよ…そうなったら、被害を受けるのは誰かね?」
「うっ!俺です」
小さくなりながら頷くフレディーは否定することができなかった。
言えば発狂するが言わなくても発狂してしまうのだから、ちゃんと言っておいた方がまだマシだった。
「どっちにしても最悪だな」
「仕方ないだろ?諦めな」
「くっ!」
最後に待っているのは魔女の脅しだと思うと頭が痛くなる。
「ああ、そうだ」
「なんだよジャン」
これ以上何があるのかと思うも。
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「はぁ!」
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「まずい…まずいぞ!」
「サクラ伯母様が、この事を知ったらどうなるか」
今は国を空けて他国を渡り歩きながら、ランドール家の名誉回復の為に奔走していると手紙を貰っているが、もし、この事を知ったら確実に島の海は血に染まる。
「どうしましょう」
「フレイアよりも怖い…」
二人が冷や汗を流していた時だった。
「えっ…きゃああ!」
「わぁ!地震か!」
いきなり地面が揺れ出した。
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