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第四章幸福と不幸は紙一重
15.侵入者
しおりを挟む二人が大慌てで邸に入って来ながら告げられたのは。
「大変だ姫さん。厄介な連中が島に来た」
「ハイジ!冷静になって聞いてくれ」
そう言いながらもフレディーの方が取り乱しているように見えたステラはため息をつく。
「とりあえずこれでも飲んで落ち着きな」
「ああ悪い」
汗をかいているので、冷たい飲み物を進めるステラ。
とりあえず落ち着こうとした二人だったが、一気飲みをしていたのであまり意味はない。
「それで、どうしたんだ?」
「奴が、ゲスタスが島に不法侵入した」
「はい?」
フレディーに変わってペトロが告げたが、ステラは誰の事を言っているかまったく解らなかった。
「ゲスタス?」
「正確には、グフタス・ランドールだ。既に爵位は剥奪されて家名を失っているが」
「まさかハイジちゃんの…」
「そうだ!姫さんを国から追放し、追剥のように何もかも奪った屑だ。元婚約者や義母に義妹も何故かいる」
ペトロの言葉に眩暈がする。
「ハイジ!」
「大丈夫かい!」
「はっ…はい、どうして今さら」
何故彼らがこの島に?
貴族でなくなったアーデルハイドに会いに来た理由が解らない。
祖国では正式な裁判により彼等は貴族ではなくなったが、だからと言って何故自分に会いに来るのだろうか。
貴族令嬢ではない自分をどうしようというのか。
「どうして…島に」
「ハイジ」
「島の人に危害を加えようと言うのですか。私に復讐を?」
もう家族の事を忘れて生きていた。
島で新しい生活をして、幸せに暮らしていた。
その一方で彼等はそれが気に入らなかったのか。
「私を追いかけて…何を」
「落ち着けハイジ、まだ君の居場所を特定したわけじゃない。それに彼等は侵入者だ」
「はい?」
不法侵入と聞かされ驚く。
「手続きもしないで?」
「うちの弟子達の話によると漁船の網に引っ掛かっていたとか」
「意味が解りません」
何故漁船の網に引っ掛かっていたのか。
「通常この島に入るには手続きを行い専用の船に乗らなくてはならない…だが、奴らは船に乗ったわけじゃない」
「大方、島を間違えたんだろう。その後、金がなくて船に侵入でもして降ろされたんじゃないか?それとも金がないからボートで海を渡たろうとして、波でボートはひっくり返ったんじゃないか」
現実的ではないが、ありえるわ。
あの家族なら考えなしな所があるから絶対にないなんて言えない!
「随分間抜けだね…すぐに警備の連中を呼ぼうか」
「うむ、ハイジに危害を加えることは許さん。急いで身を隠した方が良い」
不幸中の幸いだった。
ジャンの邸の方が安全だったのだが、次の瞬間さらに驚かされることを聞かされたのだった。
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