婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ

文字の大きさ
上 下
90 / 111
第四章幸福と不幸は紙一重

12.溺れた先

しおりを挟む




川に流されながらも必死にもがき苦しむ四人だったが、彼らの不幸はそのままでは済まなかった。


「ゲボッ!」

川が海に繋がり、不幸中の幸いにも木の板に捕まることが叶った。


「助かった…」

「死ぬかと思ったわ」


「ここは何処なの?」

「うう…」


四人は小さな板に捕まりながらも周りを見渡す。
祝女のいた島から随分離れてしまっていることが解り、とりあえず安堵した。


しかし…


「何か音が聞こえるんだが」

「何?なんの音?」


ようやく落ち着きを取り戻した最中、何処からか音が聞こえた。


振り返ると。


「船よ!船だわ!」

「何!助かったぞ!」


アイシャとグフタスはこっちらに向かって来る船に向かって手を振った。

これで助かると思ったが。


「待て二人共…」

モーギュストは波が激しくなっているのに気づく。
船が近づくたびに波は大きくなり、このままでは木の板があっても意味がない。


何より近づいてい来る船が自分達に気づくわけもない。


「何をしているのだ!お前も手を振らんか!」

「そうよ、早く…」

二人は必至で手を振っていたが、必死過ぎて気づいていなかった。


船は近づくも、そのまま突っ込んできた。

「えっ…ちょっと!」


マイラは船が止まる気配もなく進んでいることに気づき、焦りだす。


「止まらないわよ、あの船!」

「「は?」」

マイラの言葉にようやく気付く二人だったが既に遅かった。


船が近づき波はさらに激しくなり…


「なっ…波が!」

「ゴブッ!!」

捕まっていた板も意味がなくなり、大きな波に襲われてしまった。



「だから言ったんだ…ゴボッ!!」


モーギュストの声は届くことなく四人は今度こそ海の底に沈んでしまった。




・・・・・はずだったが。



何かに引き上げられる。


「ゲホッ!」

「助かった…ってなんだ!」


「きゃああ!何よこの魚は!」


「これはピラニアです…」


助かったと思ったのも束の間、魚を獲る網にかかってしまった彼ら。
しかも、牙を見せる凶暴な魚と一緒だったので、かなりピンチだったのだ。


「ピラニアって…人を襲うんじゃ」

「噛みつく魚だ」

「いやぁぁぁ!牙を見せて、こっちを見てるじゃない!」

「アイシャ、叫んだら余計に刺激するでしょ!」

「だったらお母様がなんとかしてよ!」


網の中で騒ぎだす。
ただでさえ狭い網の中で大暴れをしたら、網が体に絡まるのだが、本人は気づかずに騒いでいた。


そんな中、網は引き上げられる。


「大量だべ」

「これも女神様のおかげだ。早く島の方に戻るだ」


年配の漁師達が網を引き揚げながら重さを感じながら大量だと大喜びする。


「それにしても今日は随分、重いな」

「これだけあれば伯爵様も大喜びだ」

「んだ!最近は魚も好んでいるからな…ブランターノ伯爵様は大喜びに違いねぇ!」


網の中にいるのは魚だけと思い込む漁師二人は鼻歌を歌いながら巨大な水槽に網ごとぶち込んだのだった。


そしてその船がカスメリア島行の漁船であることをアイシャ達は知る由もなかった。





しおりを挟む
感想 291

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。

ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。 事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

【完結】元婚約者の次の婚約者は私の妹だそうです。ところでご存知ないでしょうが、妹は貴方の妹でもありますよ。

葉桜鹿乃
恋愛
あらぬ罪を着せられ婚約破棄を言い渡されたジュリア・スカーレット伯爵令嬢は、ある秘密を抱えていた。 それは、元婚約者モーガンが次の婚約者に望んだジュリアの妹マリアが、モーガンの実の妹でもある、という秘密だ。 本当ならば墓まで持っていくつもりだったが、ジュリアを婚約者にとモーガンの親友である第一王子フィリップが望んでくれた事で、ジュリアは真実を突きつける事を決める。 ※エピローグにてひとまず完結ですが、疑問点があがっていた所や、具体的な姉妹に対する差など、サクサク読んでもらうのに削った所を(現在他作を書いているので不定期で)番外編で更新しますので、暫く連載中のままとさせていただきます。よろしくお願いします。 番外編に手が回らないため、一旦完結と致します。 (2021/02/07 02:00) 小説家になろう・カクヨムでも別名義にて連載を始めました。 恋愛及び全体1位ありがとうございます! ※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◆エールありがとうございます! ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆なろうにも載せ始めました ◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

処理中です...