婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ

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第四章幸福と不幸は紙一重

12.溺れた先

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川に流されながらも必死にもがき苦しむ四人だったが、彼らの不幸はそのままでは済まなかった。


「ゲボッ!」

川が海に繋がり、不幸中の幸いにも木の板に捕まることが叶った。


「助かった…」

「死ぬかと思ったわ」


「ここは何処なの?」

「うう…」


四人は小さな板に捕まりながらも周りを見渡す。
祝女のいた島から随分離れてしまっていることが解り、とりあえず安堵した。


しかし…


「何か音が聞こえるんだが」

「何?なんの音?」


ようやく落ち着きを取り戻した最中、何処からか音が聞こえた。


振り返ると。


「船よ!船だわ!」

「何!助かったぞ!」


アイシャとグフタスはこっちらに向かって来る船に向かって手を振った。

これで助かると思ったが。


「待て二人共…」

モーギュストは波が激しくなっているのに気づく。
船が近づくたびに波は大きくなり、このままでは木の板があっても意味がない。


何より近づいてい来る船が自分達に気づくわけもない。


「何をしているのだ!お前も手を振らんか!」

「そうよ、早く…」

二人は必至で手を振っていたが、必死過ぎて気づいていなかった。


船は近づくも、そのまま突っ込んできた。

「えっ…ちょっと!」


マイラは船が止まる気配もなく進んでいることに気づき、焦りだす。


「止まらないわよ、あの船!」

「「は?」」

マイラの言葉にようやく気付く二人だったが既に遅かった。


船が近づき波はさらに激しくなり…


「なっ…波が!」

「ゴブッ!!」

捕まっていた板も意味がなくなり、大きな波に襲われてしまった。



「だから言ったんだ…ゴボッ!!」


モーギュストの声は届くことなく四人は今度こそ海の底に沈んでしまった。




・・・・・はずだったが。



何かに引き上げられる。


「ゲホッ!」

「助かった…ってなんだ!」


「きゃああ!何よこの魚は!」


「これはピラニアです…」


助かったと思ったのも束の間、魚を獲る網にかかってしまった彼ら。
しかも、牙を見せる凶暴な魚と一緒だったので、かなりピンチだったのだ。


「ピラニアって…人を襲うんじゃ」

「噛みつく魚だ」

「いやぁぁぁ!牙を見せて、こっちを見てるじゃない!」

「アイシャ、叫んだら余計に刺激するでしょ!」

「だったらお母様がなんとかしてよ!」


網の中で騒ぎだす。
ただでさえ狭い網の中で大暴れをしたら、網が体に絡まるのだが、本人は気づかずに騒いでいた。


そんな中、網は引き上げられる。


「大量だべ」

「これも女神様のおかげだ。早く島の方に戻るだ」


年配の漁師達が網を引き揚げながら重さを感じながら大量だと大喜びする。


「それにしても今日は随分、重いな」

「これだけあれば伯爵様も大喜びだ」

「んだ!最近は魚も好んでいるからな…ブランターノ伯爵様は大喜びに違いねぇ!」


網の中にいるのは魚だけと思い込む漁師二人は鼻歌を歌いながら巨大な水槽に網ごとぶち込んだのだった。


そしてその船がカスメリア島行の漁船であることをアイシャ達は知る由もなかった。





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