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第四章幸福と不幸は紙一重
10.同類
しおりを挟むフレディーは不安を抱きながらも島の警備を強化しながら、オルランド王国とも頻繁に手紙のやり取りを行った。
支援金に関しては金銭的なやり取りよりも効率で利益があるように物資を送ることで話し合いは決着し、男性医師の派遣に関しては、まだ明確な返答はしていなかった。
なんの為に女性の医師を派遣してもらったのか、理解していない連中に言っても解らないので色々誤魔化した。
「何所をどうしたら、私に手紙を出そうなんて思ったのかしら?この図々しさはあの人そっくりだわ」
「ん?あの人?」
「ええ、私と縁を切った父、紐だったんだけど」
「紐…」
母親と愛のない結婚をして、ランフォード侯爵家に入ったグフタスを思い出す。
当初からマイラとは恋人で会ったが、悲劇の主人公ぶって、愛のない結婚をしたようだが、侯爵家で贅沢をして好きにしていた記憶は消したくでも消せなかった。
第一に、夫婦としての絆なんて一ミリたりともあったのだろうか?
「私の父は、とにかく最低でね…母に愛情の欠片もなかったの。病気で倒れても見舞いにも来ないで、いざ死んだら喪も明けないまま再婚をしたわ」
「非常識だな…君の父親を悪く言いたくないが」
「政略結婚だから仕方ないと思っていたけど…この島に来て解ったの」
例え愛のない結婚でも夫婦の情が芽生えてもおかしくない。
けれどグフタスは夫婦の情すらなかったのだから。
「あの男がどれだけ軽薄な男で、自分しか愛していないということが良く解ったわ。同時に母は虐げられながらも上手く立ち回っていたのだと今になって知ったわ」
か弱い妻の振りをしながらも慈善活動をしたり、自身の私財を得る手段も考えていた。
実際、事業をして利益を得ていたのだから、母のナタリーはかなり聡明だったことが解る。
グフタスは目に見える金儲けしか興味がなかったから、継続的に収入を得ることができるのに気づいていないのだから。
「フレイアの話では裁判は終わり、貴族籍を剥奪されたらしいな」
「ええ、お祖父様から聞いたわ」
「俺的には生ぬるすぎるぞ、爵位と領地を召し上げになっても、住む場所も与えられているんだからな」
普通なら辺境地に送られ、召使の扱いを受け重労働を強いられるだろう。
もしくは鉱山で永久労働を強いられる可能性もあるのに、ぬるすぎると思ったのだ。
「まぁ、これで少しは反省して欲しいのだけど」
「反省しないんじゃないか?むしろ、君が隣国で女神として慕われていると知ったら図々しく島に来そうな…」
「フレディー、安易に想像がつきそうで怖いのだけど」
アーデルハイドはものすごく嫌な予感を感じたのだった。
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