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第四章幸福と不幸は紙一重
4.健康な食事
しおりを挟む資金調達も順調に進み、何もかも上手く行っていた。
カルフェオン王国では、カスメリア島が国一番の食料生産地として認め、今では国中の貴族や商人がカスメリア産の食料を爆買いする程だった。
国外でも、カスメリア産の稲作農業の技術を盗もうとするも、同じようには作れなかった。
熟練の農家の技術は伊達ではなく、技術だけでなく気候や水等も影響していることもあり、すべて同じに作るのはとても難しかった。
おかげで、国外の商人は技術を盗むのを諦め、食料を大量に購入することで手を売った。
おかげで値下げをすることもなく、島はどんどん潤い、そのお金で診療所を増やしたり、国内の貧しい平民の援助金にすることも叶できた。
今では島の農家。
特に稲作農業を取り仕切っていた老夫婦は平民ではあるの物、商人から教えを乞うまでになり。
稲作の神様と呼ばれるようになった。
島の住民達は、これまで島の外では肩身の狭い思いをしていたが、今では立場が逆転し、多くの人から必要とされるようになり、その結果、隠居していた老人の寿命が延びてしまった。
「これは素晴らしい成果だわ」
「ええ…この島の老人の寿命は計り知れません」
診療所で、内科医の女医達は口を揃えて言った。
他国では男女の平均寿命は70歳程度なのだが、カスメリア島の老人の平均年齢は90を超えている。
中には100を超えている老人も数名いるので、驚きの検査結果だった。
「この島の主食の…えーっと」
「ハクマイという麦に似た作物から取れた成分ですね。詳しく研究しましたが…オルランド王国では主食に食べているパンよりもずっと糖質が少なく、体に良いことが解りました」
「私も、最近は体が元気でしたし…不眠も解消されましたわ」
オルランド王国に限らず、他国では糖質が多い小麦粉が好まれている。
白くて絹のような色をしているが、その分、外側を削り、栄養価も削られているので、体にはあまり良くなかった。
対するカスメリア島は、貧しい頃から、小麦粉の外側をあまり削らずに食べていた。
その方が満腹になるからだ。
改良された今も、小麦粉はライ麦を使用している。
ライ麦の方が腹持ちも良く栄養価が高いし、米に関してもできるだけ外側を削り過ぎないように精米機を使わず手で精米していた。
他国では機械で精米をしたり、熱を加えている。
手間暇を惜しまない結果、健康にも影響していたのだ。
その結果、カスメリア島の作物は他国では豊穣の女神の恩恵があるとまで噂が流れてしまっていることを本人は知らなかった。
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