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第四章幸福と不幸は紙一重
2.信頼の為に
しおりを挟むオルランド王国は大きな国であるが、貧富の差が激しかった。
多くの大陸の中で女性が医師免許を習得することを許してしているとはいえ、未だに差別意識は強かった。
オルランド王国の国王が病に倒れ、王女が即位した当初は国は荒れていたが。
女が王になるなど論外だと言う声と、正当な血筋を持つ者以外が王になるのは論外だと。
貴族派はジェルラディン女王陛下の失脚を幾度なく狙ったが、背後にアルテリア帝国がいるので迂闊な真似は出来なかったが、女性地位向上を目指すジェルラディンの邪魔をしたかった。
女性で爵位を持つ者はジェルラディンの味方だからだ。
派遣された女性陣が失態を犯せば、その責任はジョエルラディンの失脚に繋がるのだから。
派遣された彼女達も、追い出されるような形で国を出たのだが、出迎えに関しても船旅に関してもかなりの待遇の良さに驚いたが。
一番驚いたのは衣食住の待遇の良さだった。
「こちらが先生方のお住まいとなります」
「ここが…」
「なんて広いの」
案内された邸は貴族が住まうような邸で庭も美しく海が一望出来て日当たりも良く過ごしやすい環境だった。
「食事の献立は、こちらになります。苦手な物や食べられない物がございましたらお申し付けください。邸内の掃除はメイドがさせていただきます」
「えっ…掃除まで?」
「必要がないのでしたらお申し付けください。プライバシーに関わることがないように気を配りますが、行き届かぬ部分もあるかと思います。その時はお申し付けください」
邸内を案内するアーデルハイドに、女医が訪ねる。
「あの、アーデルハイドさん」
「どうか私の事はハイジと。プレスティ夫人」
「え?私の事をご存じですの?」
アーデルハイドに名前を呼ばれ驚く。
他の女医や学者達のことも名前で呼びながら礼を尽くす。
「ハイジさんは皆の名前をすべて覚えておいでですの?」
「当然でございます。これから皆様にお世話になるのですから」
彼女達が選ばれた時点で、アーデルハイドは顔と名前だけでなく、プロフィールをかき出し、失礼にならない程度の情報を、島の住民に伝え、できるだけ不自由のないように過ごしてもらう様に徹底した。
「できる限り、お仕事に集中していただけますように、誠心誠意を尽くさせていただくのは当然です」
自尊心が高く自立心の高い彼女達に居心地よく過ごしてもらえるように最高の持て成しを徹底することで誠意を見せる。
そして相手側も信頼を置いてくれれば、きっと有効な関係を築けると思った。
その結果。
「ここまでの待遇を用意していただいた以上は信頼に応えなくてはなりません」
「私達の誇りにかけてお約束します」
「どうか、よろしくお願いします」
アーデルハイドの誠意が通じたのか、彼女達も最善を尽くすことを約束した。
その結果、オルランド王国から派遣された医師達はカスメリア島の為に働き、カルフェオン王国を通じて彼女達の名が他国に知れ渡り、女医の地位が上がることになるのだった。
そしてその後押しをしたアーデルハイドの名は瞬く間に国外に広まりつつあった。
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