婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ

文字の大きさ
上 下
75 / 111
第三章栄華が終わる時

20.婚約者との会話

しおりを挟む




アイシャはアーデルハイドがどうなったか知らなかった。

国外追放の身となった貴族は修道院に送らたとしても、最悪な結末が待っていた。

それが、貴族が送られる修道院であっても。
特に隣国の辺境地は厳しい土地で真面な診療所もないど田舎で、貴族が送られるような場所ではなかった。


高位貴族として何不自由なく過ごしてきたアーデルハイドが惨めな暮らしをしているはずだと。

もしかしたら辛過ぎて耐え切れなくなり自害をしているかもしれないと思っていたのに。


「ありえない…お姉様が…そんなはずはないわ!」

信じたくない気持ちだった。
自分はこんな惨めで不幸なのに、アーデルハイドは幸せなんて許せないのだ。

不幸でなくては。

惨めでなくては許せない。

「そんなはずないわ…そうよ、貴族籍から除籍されて、罪人になって幸せになるはずがないわ!」


そんな最中。


「アイシャ!」

「モーギュスト様?」


「久しぶりだな」


しばらく学校を休んでいたモーギュストが現れた。


「ええ、お久しぶりですね」

「会いたかったよ」


今までならばすぐに駆け寄り抱き着くが、アイシャの表情は冷たいものだった。


「私に何か御用でしょうか?」

「えっ…いや」


用がなくても婚約者ならば声をかけても不思議ではない。
なのにこの冷たい態度はなんなのだろうかと思った。


「用がないと声をかけては行けなかったか?」

「いいえ、そのような事は…」

今までならば天使のように愛らしい笑顔を向けていたのに冷めた目を送られ、モーギュストは驚くばかりだった。


「ようやく謹慎が解けたんだ」

「そうですか」


しばらく休んでいたモーギュストを心配する素振りも一切なかった。
そんな折だった。


「この後良かったらカフェテリアにでも行かないか…君との婚約のことでご両親にも挨拶に行かなくてはならないし」

「解りました…」

気が乗らないが、アイシャにはもう利用できる取り巻きはいない。
既に実家に帰されたり、謹慎処分になり学校を退学になったり、貴族籍を除籍されて頼ることはできなかった。


一応は侯爵家の次男であるので、いないよりもマシだと思っていた。




しかし二人は知らなかった。
モーギュストがこのタイミングで学園に戻ってこられた本当の意味も。


そしてギルビット家が降格になり、子爵家となった事など。


アイシャは何一つ知らなかった。




「シャリエール令嬢、ギルビット令息。学園長が及びです。ご同行ください」


二人がカフェテラスに行く途中、学園の警備隊に声をかけられる。
傍には生徒指導の教師も一緒だった。

「え?」

「大事なお話がございます」

「話?」

何の話かと思ったが、すぐに笑みを浮かべる。


学園内での他の生徒の態度の詫びだろうかと思った。

自分に都合のいいようにしか解釈しないアイシャは素直に同行し、モーギュストも大人しく後を追ったが。


この後さらに悲劇が襲うことになるのだった。

しおりを挟む
感想 291

あなたにおすすめの小説

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◆エールありがとうございます! ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆なろうにも載せ始めました ◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。 学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。 そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。 それなら、婚約を解消いたしましょう。 そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。

婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません

黒木 楓
恋愛
 子爵令嬢パトリシアは、カルスに婚約破棄を言い渡されていた。  激務だった私は婚約破棄になったことに内心喜びながら、家に帰っていた。  婚約破棄はカルスとカルスの家族だけで決めたらしく、他の人は何も知らない。  婚約破棄したことを報告すると大騒ぎになり、私の協力によって領地が繁栄していたことをカルスは知る。  翌日――カルスは謝罪して再び婚約して欲しいと頼み込んでくるけど、婚約する気はありません。

不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるイルリアは、婚約者から婚約破棄された。 彼は、イルリアの妹が婚約破棄されたことに対してひどく心を痛めており、そんな彼女を救いたいと言っているのだ。 混乱するイルリアだったが、婚約者は妹と仲良くしている。 そんな二人に押し切られて、イルリアは引き下がらざるを得なかった。 当然イルリアは、婚約者と妹に対して腹を立てていた。 そんな彼女に声をかけてきたのは、公爵令息であるマグナードだった。 彼の助力を得ながら、イルリアは婚約者と妹に対する抗議を始めるのだった。 ※誤字脱字などの報告、本当にありがとうございます。いつも助かっています。

(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに

にのまえ
恋愛
夏のおとずれ告げる王城主催の舞踏会。 この舞踏会に、婚約者のエスコートなく来ていた、公爵令嬢カサンドラ・マドレーヌ(18)は酔って庭園にでてきた。 酔いを冷ましながらバラ園の中を歩き、大昔国を護った、大聖女マリアンヌの銅像が立つ噴水の側で。 自分の婚約者の皇太子アサルトと、妹シャリィの逢瀬を見て、カサンドラはシャックを受ける。 それと同時にカサンドラの周りの景色が変わり、自分の悲惨な未来の姿を垣間見る。 私、一度死んで……時が舞い戻った? カサンドラ、皇太子と婚約の破棄します。 嫉妬で、妹もいじめません。 なにより、死にたくないので逃げまぁ〜す。 エブリスタ様で『完結』しました話に 変えさせていただきました。

有能婚約者を捨てた王子は、幼馴染との真実の愛に目覚めたらしい

マルローネ
恋愛
サンマルト王国の王子殿下のフリックは公爵令嬢のエリザに婚約破棄を言い渡した。 理由は幼馴染との「真実の愛」に目覚めたからだ。 エリザの言い分は一切聞いてもらえず、彼に誠心誠意尽くしてきた彼女は悲しんでしまう。 フリックは幼馴染のシャーリーと婚約をすることになるが、彼は今まで、どれだけエリザにサポートしてもらっていたのかを思い知ることになってしまう。一人でなんでもこなせる自信を持っていたが、地の底に落ちてしまうのだった。 一方、エリザはフリックを完璧にサポートし、その態度に感銘を受けていた第一王子殿下に求婚されることになり……。

処理中です...