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第三章栄華が終わる時
19.癇癪
しおりを挟む学園では完全に孤立し、教師に手を上げたことで冷たい目で見られるようになった。
道を歩けば、通行の先に人がいれば道を空けるように命じると。
「ちょっと、邪魔よ!」
「きゃあ!」
悲鳴を上げられる始末だった。
「大丈夫ですか!早く離れましょう」
「何をされるか解りませんわ…先生にも大怪我をさせるような方ですし」
「ええ」
少し声を上げただけなのに怯えるような目で見られ。
図書室に行けば。
「やだ…移動しましょう」
「ええ、邪魔だからって、何をされるか解ったものではありませんわ」
アイシャが図書室に入れば怯えた表情をするものが多かった。
教室はカフェテリアとは異なり、下級貴族派蔑むという視線よりも恐怖心を抱くような視線だった。
軽蔑の視線も許せないが、自分を怯えるのも許せない。
イライラがヒートアップする中、物に当たるしかなかった。
以前までなら嫌な事があったらアーデルハイドを悪者にして、周りはアイシャを庇ってお姫様気取りだった。
苦痛の表情と耐え忍ぶ表情は見ていて気持ちがよかったが、泣こうとしもしないアーデルハイドを不快に思い、もっと、もっと追い詰めて惨めにしてやろうと思った。
なのにそれも叶わない。
「何で私がこんな目に合わないといけないのよ…そうよ、全部あの女の所為よ」
自分がこんな不幸な目に合っているのはアーデルハイドが悪い。
誰からも愛され大切にされるはずの自分が爪はじきに合っていいはずがないと思った。
「モーギュスト様は休んでいるし…」
こんな時、婚約者ならばすぐに駆け付け、抱きしめてくれるものだ。
「肝心な時に役に立たないわね…」
既にアイシャの中でモーギュストの価値はなくなりかけていた。
元からアーデルハイドの婚約者だったから奪いたかったようなものだ。
外見もそれなりに良かったというのも一つの理由だが、今ではモーギュストも学園で孤立している状態だったのであまり頼りにならず魅力も半減していた。
そんな時だった。
「聞きまして、アーデルハイド様の噂」
「私も聞きましたわ」
廊下で話し声が聞こえた。
普段なら聞き耳を立てたりしないが盗み聞きをする。
「島流しになったと聞いて心配していおりましたが噂では、島おこしをなさっているとか」
「ええ新聞に載ってましたわね…なんでもカルフェオン王国の南国で事業をなさっているとか…ご無事でよかったですわね」
「ええ…それんしてもたくましい方ですわね」
「本当に」
きゃっきゃっとはしゃぐのは下級生だった。
「でも、貴族令嬢が田舎で事業なんて簡単にできるのかしら?」
「アーデルハイド様だからではなくて?普通の貴族令嬢がそんな真似できませんわ」
「本当にご立派ですわね!」
新聞を見ながら憧憬の視線を向ける下級生はそのまま去って行く。
「何…お姉様が南国で事業?」
聞き耳を立てていたアイシャは信じられない気持ちでいっぱいだった。
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