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第三章栄華が終わる時

12.捨てられた令嬢

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家族からも見放されたモーギュストを助けてくれるような友人はいなかった。
アーデルハイドを追放する時に関わった令息達は、家族に勘当されたり。

地方に飛ばされたりしていた。
関わった騎士達も降格扱いになり、既に王都にいなかった。

だが、ここで目を付けたのが自分の取り巻きだった令息の元婚約者だった。

彼女達に力を借りようと思ったのだが。


「申し訳ありませんが、私達は既に婚約破棄をしておりますので他人です。お力になれません」

「いくら何でも冷たすぎないか!君はダルタニアンの婚約者で幼馴染だろう!」

「ええ…ですが、私を捨て。アイシャ様を愛している。別れて欲しいと言ったのはあの方ですわ。婚約解消ではなく婚約破棄をされた時に幼い頃の恋心は散りましたわ」

「何を言っているんだ?どっとも同じだろう?」


モーギュストには解らなかった。
婚約解消なら許せたと言う言い分に意味が解らないようだ。

「婚約解消なら、傷はつきませんでしたわ。ですが破棄となれば私に問題があると社交界で笑い者にされたのです。これを許せましょうか…他に好き方がいたならば、謝罪をして誠意を見せてくれれば良かったのに」

婚約者に裏切られ、自分は悪くないと逆ギレされて恥をかかされ社交界で傷物扱いを受けたことを告げる伯爵令嬢の怒りはまだ収まっていなかった。

「だが、そんな過ぎた話を…」

「過ぎたですか。それは加害者側の言葉ですわ。被害者の傷は一生残りますわ。女だから泣いて暮らせと?」

「あっ…いや」


完全に怒らせてしまった事に気づくがもう遅かった。


「お帰りください。そもそも、伯爵令嬢で傷物令嬢の私に何の力がありましょうか?」

「頼む、頼れる人が他にいないんだ」

「フッ、私と同じような立場の方に声をかけたのですね?そして断られた…当然ですわ。私達の婚約者はアイシャ嬢の所為で愛する人を失ったのですから」


嘲笑うような笑みを浮かべる。

「魔性の女に騙されるとは愚かですわ。でも、お礼を申し上げますわ」

「お礼?」

「ええ…あんな馬鹿な女に騙されるような夫は要りませんわ。それに父も考えを改め、入り婿を取るのを考えてくださいましたの」

「何…」

「私が跡継ぎになることになりましたわ」


馬鹿な男を跡継ぎにさせるぐらいならば娘に後を継がせた方が良いと考え直してくれたのだ。


「他の皆さんも、結婚して籠の鳥で過ごすよりも自分の未来は自分で切り開く選択を得ましたわ」

「そっ…そんな」


これまで男尊女卑が当然だと言われてきた社交界は、モーギュストとアイシャによってその秩序が壊されてしまった。


「では御機嫌よう」

「まっ…」

手を伸ばそうとするも門番に阻まれ、モーギュストはそのままつまみ出されることになるのだった。


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