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第三章栄華が終わる時
9.鞭と電撃
しおりを挟むぶつけた拍子に壁に置かれていた花瓶が傾き、水を被ってしまうモーギュストをさらに軽蔑する視線を向けるアントニア。
「本当に人として最低な方…私が浅ましいと言うならば、婚約者がいながらその妹と肉体関係を持った貴方は情夫ではなくて?少なくとも私はそんな破廉恥な真似できませんわ…本当に恐ろしいですわ。気持ち悪いですわ」
「貴様…賊民の分際で!」
これ以上無いほど、屈辱を味合わせられ逆上するも。
「がっ!」
「黙れ!屑が!」
アントニアに飛びつこうとするも、ジュードが力で押さえつける。
「はっ…離せ!」
「誰が離すか…アニーに暴行するぐらいなら、ここでお前を殺してやる!」
「馬鹿な…魔力なんてほとんど使えず体の弱いお前が…そんなことをすれば!」
暴れるも、ビクともしない事に驚く。
幼少期から魔力が弱く、病弱だったはずだ。
なのに何故?
「ジュード様は確かに病弱でしたが、我が紹介で開発した薬草で健康になりましたの。数年前には健康なお体になってましたわ…そんなことも知りませんでしたの?」
「嘘だ…そんな」
「ああ、よその女と乳繰り合っていましたものね?しかもランドール侯爵家から支援されたお金を勝手に使って」
「何故…」
どうして知っているのかと尋ねるも愚問だった。
アントニアの実家は今では銀行業を営んでいるので、お金の出所を調べるなんて簡単だった。
「帳簿を上手く偽造したそうですが。甘いですわね?専門家を騙すなんて無理ですわ。貴方が雇ったお馬鹿さんは既に拘束されていますわ」
「なんだと」
「これで貴方の罪は一つ追加、貴方が独断でしたことを証言してくださいましたので…罪は貴方だけ。どういうことか解りまして?」
近づきながらそっと耳打ちする。
「誰がアンタなんて助けるか…バーカ」
「貴様ぁぁぁ!」
「アントニア!」
力の限り暴れ、ジュードを突き飛ばす。
「この娼婦がぁぁぁ!」
傍に飾られていたナイフを手に取り、アントニアを殺そうとした刹那。
鞭が飛んできた。
「ぎゃあああ!」
叩かれた鞭からは激しい電撃が流れ、そのまま倒れるモーギュスト。
「私がなんの準備もなく来ると思って?私が貴方を庇わないと言えばどうなるかなんて解りきってますわ」
「な…んで」
平民であるアントニアは魔力がないので、鞭に電撃を流すなんて不可能だった。
「魔道具の一種で、遠い昔に魔女が使われてましたの。流石北の魔女様…素晴らしいものをくださいますわ」
「北の…魔女だと?」
「ええサクラ様から頂きましたのよ」
にっこりと美しい微笑みは、大魔女の様に恐ろしく感じたモーギュストだったが、既に抵抗する体力はない。
全身が痺れて動けないかったからだ。
しかし、皮肉なことに、意識だけは保っていたのだったが。
この後さらに悲惨な言葉を聞くことになるのだった。
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