婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ

文字の大きさ
上 下
62 / 111
第三章栄華が終わる時

7.妻女

しおりを挟む




既に、ギルビット家は没落するのは確実だった。
爵位を剥奪された後はどのような沙汰が待っているか解らない。

一家の向かう先は、悲惨なものである事だけは解った。

「嘘だ…こんなのありえない!」

「モーギュスト」

この期に及んで現実を受け入れられないでいる最中。


「失礼しますわ」

「アリー!」


一人の女性が、ギルビット家に訪れた。

「アントニア…」

「ご挨拶もなく申し訳ありません。お義父様、お義母様」

ジュードの妻のアントニアが現れ、一家は驚く。

現在は実家に身を寄せているはずが何故と困惑するジュード。

「アニー、どうして」

「どうしたもこうもありませんわ。旦那様」

少しばかり怒った表情をする。

「一方的な手紙を送ってはい、終わりとは…私を馬鹿にしてますの?夫が危機の時に私だけ安全な場所に入れるわけがありませんわ」

「しかし!」

「私は貴方の妻ですのよ?喜びも苦しみの分かち合ってこそですわ。貴方が茨の道を歩くならご一緒するまでです。これまでだって、社交界で散々苦労してきたのです…この程度ちょろいですわ」


明朗快活なアントニアはどんな辛い時でも笑っているような強い女性だった。

「私は…」

「何もおっしゃらないでください。私を誰だとお思いになりまして?今では五大商会の一つを牛耳る女傑ですわ。成金を甘く見ないでくださいまし」

なんとも頼もしい発言だった。
これまで数多の修羅場を乗り越え、社交界では嫌味を笑って叩き潰すほどの手腕の持ち主だった。

「最悪の事態を免れることはできましょう。良くて降格か領地召し上げに留めることは可能です。最悪は爵位はく奪となりますが…私が女子爵の爵位を持っておりますのでどうにかなりますわ」

騒ぎを起こした令息のように辺境地に追放されることはないと知り安堵するモーギュスト。

「では義姉上の手で、裁判に勝利してもらえるのですね!あの悪女に騙された私も被害者で…」

「何を言ってますの?裁判に勝てるわけがないでしょう?」

「え…」


モーギュストが的外れな事を言い放つや否や、アントニオは冷たい視線を向ける。


「貴方はまったく反省がありませんのね?最悪の事態は免れると言いましたが…裁判に勝つ?馬鹿を言わないでください。こちら側は加害者ですのよ?ありえませんわ」

アントニアは裁判に関して少しも触れていないのに、さも当たり前のように丸く収め助けてくれると思っていたモーギュストに呆れた。


「しかし、義姉上の財力で助けてくれるのでは…」

「お金と権力さえあればなんでもできると思ってますの?本当に頭が悪いこと…猿以下の知能ですわ。これだから馬鹿で世間知らずは困りますわ」

「なっ…!」

明らかに蔑むような視線に、汚い物を見るような態度。

扇を突きつけられる行為に怒りを覚えた。

ずっと格下だと見下していた義姉に見下されるモーギュストのプライドはズタズタだった。

しおりを挟む
感想 291

あなたにおすすめの小説

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◆エールありがとうございます! ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆なろうにも載せ始めました ◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。 学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。 そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。 それなら、婚約を解消いたしましょう。 そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに

にのまえ
恋愛
夏のおとずれ告げる王城主催の舞踏会。 この舞踏会に、婚約者のエスコートなく来ていた、公爵令嬢カサンドラ・マドレーヌ(18)は酔って庭園にでてきた。 酔いを冷ましながらバラ園の中を歩き、大昔国を護った、大聖女マリアンヌの銅像が立つ噴水の側で。 自分の婚約者の皇太子アサルトと、妹シャリィの逢瀬を見て、カサンドラはシャックを受ける。 それと同時にカサンドラの周りの景色が変わり、自分の悲惨な未来の姿を垣間見る。 私、一度死んで……時が舞い戻った? カサンドラ、皇太子と婚約の破棄します。 嫉妬で、妹もいじめません。 なにより、死にたくないので逃げまぁ〜す。 エブリスタ様で『完結』しました話に 変えさせていただきました。

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

処理中です...