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第三章栄華が終わる時
5.元婚約者の罪
しおりを挟む一方その頃、モーギュストは学園内でも社交界でも危うい立場にいた。
両陛下に黙って勝手な真似をして、婚約者であるアーデルハイドを国外追放をしたことで孤立していた。
最初はまだ、真実を知らない者が多かったし、調査をされていなかった。
しかし数日前に起きた鉱山での事件で、モーギュストの不評は社交界でも知れわたることとなりギルビット家は窮地に追いやられた。
元よりギルビット家はアーデルハイドに好意的だったこともあり、今回の出来事で侯爵夫人は病で倒れてしまった。
父親である侯爵も息子の暴走に嘆きたくなったが、育て方を間違えたと嘆きながらも責任を負う覚悟だった。
「お前はとんでもない事をしてくれた」
「お前のしでかした罪はあまりにも重すぎるぞ」
「は?」
状況が解っていないモーギュストに父親も兄も頭が痛かった。
「無実の婚約者を身包みを剥ぎ、国外追放にし、あげくの果て国内の法を犯すとは」
「何を…」
「貴族はギルドの活動に介入してはならない、権力を使って虐げてはならないと決まっている。にも拘わらず言葉の暴力で傷つけ無理な重労働を強いて…あげく休みなく奴隷のように働かせるとは言語道断だ!」
最初こそは穏やかな口調だったが、最後の方では怒鳴りつけるような口調で告げられる。
「ギルドマスターよりもすべて聞いたが、明らかに非はこちら側にある!」
「待つて下さい。裁判は…」
「必要ない。裁判をするまでもなく、悪いのはこちら側だ。下手をすれば私達は爵位をはく奪され平民となるだけではなく財産もすべて奪われ、牢獄行きだ」
父親の言葉にモーギュストは納得できなかった。
「何故です!」
「こんなことも解らないのか…お前はアーデルハイド嬢が正当な侯爵家の跡継ぎであることは知っているな」
「ええ…」
「対して父親のグフタスは侯爵の継承権は一切ない。あの男は婿養子だからだ。その時点で侯爵家の正当な後継者を不当な扱いをしたことで罰せられる…あげく乱暴をした事実もある」
「あれは!」
傍にいる騎士が勝手にしたことだと言おうとするも。
「ああ、あの馬鹿は爵位を奪われ北の棟に幽閉となった後に…ドーヴィン領地に追放だ」
「ドーヴィン!」
ここから北の最果てと呼ばれる領地でとても貧しい土地だった。
罪を犯した者が構成する場所として送らるのだが、その領地を取り仕切る伯爵家の侍女頭はとても厳しく、鞭打ちは当たり前で貴族ならば耐えることはできないだろうと言われている。
「馬鹿をしでかした騎士達はの中には死地に派遣され、二度と生きて王都に戻ることもできないそうだ。だが、死刑にならないだけ、王妃陛下の温情と言うべきだろうな」
淡々と話す父親にモーギュストが反発する。
「何が温情です!死ぬ方がマシだ」
貴族として生きた者が平民の暮らしを強いられるのは生き地獄のようなもので屈辱的だと叫ぶが、さらに自分の首を絞めていることに気づかなかった。
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