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第三章栄華が終わる時

4.出生の事実

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突きつけられた事実に耳を疑った。


「何を…」

「お嬢様の外見は奥様に瓜二つだが、髪の色だけは違う。気づかなかったのか」

「だから何だと言うのだ」


アーデルハイドの外見はナンシーに瓜二つだが、髪の色だけが異なっていた。
母親と異なった髪の色を持つならば父親の遺伝子があるはずだが、グフタスと似通う部分は一つもなかった。


「貴様の所為で婚約が無くなったある貴族のお方との間に生まれたのがアーデルハイド様だ」

「なっ!」

「愚かな。ナンシー様は聡明な方だ。泣く泣く貴様と夫婦になっても心だけは許さなかった。故に処女だと思わせたのだ…貴様には子が成せなかったからな」

「何を…」

「それからあの娘は貴様と血は繋がっておらん。あの馬鹿女が情夫との間に産んだ子だ」

「なっ!」


信じられないと言うような顔をするグフタスに嘲笑いながら鑑定結果と、マイラの浮気現場の証拠を押さえた書類を見せる。


「当時、貴様は国を空けていた。しかし子をすぐに身ごもれると思っているのか?期間を計算しても合わないのだよ」

「そんな…馬鹿な」

「愚かだ、あの女は、結婚後も多くの男と肉体関係になっ。貴族社会では愛人を持つのはおかしくないが…あまりにも節操がないようだな」

「くっ…相手が私の友人だと!中には平民までも!」


浮気者のリストには平民や貴族がいるが、すべて若くて美しい男性が多かった。


「鑑定結果を疑うなら、自分で鑑定すればいいだろう。あの娘とお前がまったく赤の他人だというのが…まぁ、血の繋がりは無くともそっくりだがな…軽薄で、尻軽で恥知らずな所はそっくりではないか」

「やめ…」

「頭も悪く、プライドだけは人一倍で、何も持たない」

「やめろ…」

「世界は自分の為にあると思いあがる愚かさ、本当にそっくりだ」


怯えながらやめろと繰り返すも体が動かなかったグフタスは、ようやく気付く。


動かないのではなく動けないのだと。


「貴様は誰からも愛されない、誰かを愛したことがないからな」

「もう止めてくれ!」

これ以上聞きたくないと、耳を塞ごうとしても手が動かない。

「あああ!!」

「苦しむがいい。貴様の首に刻まれた刻印は、サクラ様が尋問として火あぶりにした時に焼いた呪いだ」


合図を送れば幻影がグフタスを襲うように仕組まれていた。
あらかじめサクラが来た時に、合図の送り方を聞かされていたのだった。


「これから裁判で責められ、罵倒を浴びせらるがいい」

「私は…悪く…」

「社交界でも貴様の悪名の高さはかなりのものだ。誰も助けまいよ…領民には火の粉が飛ぶことはないようにしているかから安心して生き地獄に行け」

「助け…」

「ハッ、助けるわけがなかろう?」


ヴィエラも使用人を人質に取られ、アーデルハイドを人質に取られながら酷い仕打ちを受けて来た。

許せるわけはない。


「あと一つ、教えてやろう」

「何を…」

「アーデルハイド様は、馬鹿達の愚かな計画を知っておられた。自ら追放される道を得たんだのだ」

「馬鹿な!そんな…」

知っていて甘んじで追放された等、信じられなかった。

「後で知ることになるだろう。貴様達は所詮、踊らされたに過ぎんことをな」


そう言い残してヴィエラはランドール侯爵家を去って行った。

そして、その日から本当の地獄が始まることになるのだった。



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