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第三章栄華が終わる時

1.顧問弁護士

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鉱山での事件が起きた後に、ランフォード家はその責任を突きつけられた。

当然責任を取ることはできず、事件が起きた鉱山だけではなく、他の土地も差し押さえになった。

事故で行く不明になったギルド達にも親しい友人がいたので、彼らはランフォード家を責めた。

しかしグフタスは事故だと主張し、己の責任から逃げたことにより、少ないながらも庇ってくれた弁護士も愛層をつかし。


「侯爵様、私は貴方の弁護を降りさせていただきます」

「何を…」

「私は、当初貴方の弁護をするつもりでしたが…被害者の方々の対応の酷さは目に余ります。私も人です、心はありますし良心があります…貴方ほどの悪人は初めてですよ」

「貴様!私を愚弄する気か」

弁護士は下級貴族出身だった。
グフタスはこれまでの恩を受けておきながら許せないと思ったが。

「侯爵家の顧問弁護士として働いてまいりましたが、ずっと依頼料も滞っていました。これは罪になります。それでも黙ってきました…ですが限界です」

「待て…」

「新しい弁護士を御雇になればいいでしょう。まぁ、真面な弁護士は貴方を弁護しないでしょう?時期に裁判も始まりますからね…弁護士は勝ち目のない勝負には出ませんから」


グフタスは冷や汗を流す。
顧問弁護士の言う通りだった。

彼はこれまでの付き合いで弁護を引き受け、アーデルハイドを追放した一件で勝ち目がないのに弁護を引き受けてくれた。

他の弁護士には断られていたのだ。


「既に調査は終わり、アーデルハイド様の無実は証明されています。彼女が妹君を苛めた証拠は出ませんでしたし逆に妹君が姉君を虐げ、学園でも問題を起こした証拠が沢山出てきています」

「そんな…」

「前侯爵様は責任を取って貴族籍を除籍するとおっしゃられ、王族に謝罪の手紙を送っておられます。誠に素晴らしい方です」

「なっ…義父上が!」


前侯爵であるが貴族としての影響力は強いレイジは王族からの重宝されていたが、今回の事で責任を負い爵位を返上すると申して立てていた。


「ちなみにですが、今回の事件は前侯爵様の責任は一切ありません」

「何故だ!そんなこと…」

「事故が起きる一か月前に既に除籍の手続きをされていたからです。故にあの方は無関係になり、関係ないとされるでしょう」


アイシャが起こした事件は、火元責任者であるグフタスにすべてかかって来る。

しかしグフタスは、万一の時はレイジに責任を押し付け何とかしようと考えていたのだ。


「なんとか!義父に!」

「無理です。あの方は既に平民となり国を出られました。アーデルハイド様を追放になられた後に責任を取ると言われました」

「そんな!何処にいるか解らないのか…なんとか連れ戻して」

グフタスはレイジがどれだけ心労を与えられているか解っていない。
社交界ではレイジは心労のあまり病気になり、何処かで療養していると思っている。

半分は真実なのだが…


「レイジ様はご高齢です。大切なお孫様を失い傷心のあまり病で臥せっていてもおかしくありません…そんな方を無理やり連れ戻されるのですか」

「そんな大げさな…孫はもう一人いるではないか!アーデルハイドとて死んだわけではない」

あんまりの言いぐさに顧問弁護士のドギーマは耐え切れなくなった。


「少しでも情をかけた私が間違いでした!貴方のような悪人には弁護を受ける資格はありません」

「待て!」

捕まれた手を叩き、ドギーマはその場を去る。


「同じ弁護士達にも貴方の弁護はしないように告げておきますのでお覚悟さないませ」

「待て…待ってくれ!」


自らの手で首を絞めたグフタスを助けてくれる人はいなかった。

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