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第二章南の島開拓
26.王家一同
しおりを挟む初めての顔合わせにフレディーは穴に入りたくなった。
いくら何でも、こんなふざけた顔合わせがあるのだろうかと思った。
「父上と母上はともかく…兄上と祖父さんまで」
「ああ、我が国の王族と隣国の恥が晒されているよ」
「泣きたいのは私の方だ!」
その傍にいた細身のぺエロはシクシク泣いていた。
「リッチ、いたのかい?相変わらず影が薄いね」
「ステラ!お前という奴は…私がどれだけ心労を与えられたか解っているのか!財務大臣であるこの私が、道化師の真似事など!」
涙を流しながら訴えるリッチモンドはステラに八つ当たりをする。
「流石、貴方の家族ね?そろって個性的じゃない?」
「言うなフレイア」
結婚式に身内の恥を晒す羽目になったフレディーは嘆いたが、アーデルハイドはすぐに挨拶をする。
「この度は遠路はるばるお越しくださり誠にありがとうございます。私はフレデリック様の妻のアーデルハイドと申します。不束者ですが末永くよろしくお願いします」
かなり奇抜な家族の登場にも関わらず淑女らしい挨拶をするアーデルハイドに一同は固まった。
どんな時も動じず冷静に対応する姿は貴族令嬢の鑑だった。
しかもホスト役として招待した客に対する気遣いもできているとくれば、言うことなしだった。
「まぁ、なんて躾けの行き届いた方なのかしら」
「ああ…まったくだ」
「見事だ」
「うむ、私達を見て動じぬとは。腹が据わったお嬢さんのようだ」
アーデルハイドの対応に家族一同文句のつけようがなかった。
「本来ならばご挨拶に伺わなくてはならない所を、誠に申し訳ございません」
「お顔をあげられよ、アーデルハイド嬢。そなたの立場は聞いておる」
「はい…」
家族を代表してエドモンドが告げた。
「立場上、私達に挨拶に来ることが難しいのは知っている。それに、フレデリックが許さないであろう」
「祖父さん…」
「お前はアーデルハイド嬢を貴族社会に関わらせたくないはずだ。故に挨拶に来ることはできなかった。解っている」
貴族であることを辞めて平民となったフレディーは貴族社会を嫌っていた。
汚い欲望の中に愛しい人を放り込むような真似をできるはずもなく、挨拶に行くことは叶わなかったことも解っていた。
「アーデルハイド嬢や、孫をお願いします」
「はい…」
「フレディーや、何かあったらすぐに呼ぶのだぞ。私の影がすぐに飛んでいく故な」
「俺は祖父さんが飛んできそうで怖いんだが」
未だに衰えを感じさせない祖父に嫌な予感し悲しないフレディーは万一の事が起きないことを心から祈るより他なかった。
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