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第二章南の島開拓
19.赤字親子
しおりを挟む多額な借金を背負いながらも、アイシャの生活は変わることはなかった。
母親も同じで、贅沢な暮らしを今さら辞めることはできないのか、ストレス発散にさらに浪費は悪化するばかりだった。
「お父様、新しいドレスはローズ嬢のオーダーメイドが良いですわ!」
「今度のお茶会には隣国の王族の方も見られるのですから宝石も新調しなくては。ああエステも」
二人は夕食の席で平然と言う。
王族専属のデザイナーで、平民でありながら王妃直属のお針子から成り上がったローズ・ベルガモット。
お針子でありながらも化粧師としての才能もある、まさしく才色兼備と尊敬を集める彼女の尽くすドレスや洋服は必ずヒットする。
現在は国外にも何店舗も店を構えており、恋人は王妃直属の髪結師で二人そろって芸術家だったことからサロンは何時も満員で予約も取れない程だった。
特にドレスは値段が高く、一着だけで他の店で売られているドレスを五着購入は出来るほど高かった。
「ドレスはまだあるだろう?それに一週間前に…」
「なんか思ったのと違ったの。まだ着てないけど要らないわ」
一度も袖を通していないのに要らないという始末。
「そうね、ドレスは何着あっても困らないわ。この際だから十着ぐらい新調しないと…一度しか着ないし」
「一度だと!」
いくら何でも一度着て終わりなんてありえないと思った。
その一方で、グフタスは今さらになって思い出したことがある。
――アーデルハイドにドレスを買ったことはあったか?
ドレスだけではない、宝石を買い与えたこともあるのかと思った。
常に買い与えるのはアイシャだけで、アーデルハイドに何か買い与えた記憶はない。
だが、アーデルハイドの部屋には衣装タンスに仕舞われているので、必要ないからだと思ったが。
「私の着ないドレスはお姉様の部屋に移したから、また沢山買えるわ」
「ええ、衣裳部屋にしてあるから問題ないわ」
既にアーデルハイドをいないものとして扱い部屋を衣裳部屋にしていると聞かされる。
アーデルハイドはドレスをほとんど持っておらず、アイシャのドレスを仕舞う衣裳部屋にされていたことになる。
グフタスは怒りを覚えた。
別に、アーデルハイドに対して情を抱いたわけではない。
「そんなにドレスを買っていたのか!」
「えっ…」
「貴方?」
ワイングラスを乱暴に置き立ち上がる。
二人は何を怒っているのか解らないでいた。
「そんな無駄な金はない!アイシャ、お前に新しいドレスは不要だ」
「どうしてぇ…酷いわ」
涙ぐむアイシャだったが、いら立つ。
「貴方、どうしてそんな酷いことを!」
「酷いのはどっちだ、我が侯爵家は多額の借金を背負い、先日起きた事故により損害賠償金を請求され、鉱山のみならず他の土地は差し押さえられている状態だ!」
「えっ…」
「こうなったのはアイシャの責任なのだぞ!この馬鹿が現場でギルド達を罵り暴行を加えた…いくら身分が低かろうともギルドに不当な扱いをすることは許されない…すべてお前の責任だ!」
ずっと抑え込んでいた怒りが爆発した。
自分はこんなに悩み苦しんでいるのに、妻と娘は贅沢三昧をしていることが許せなかった。
自分の事は棚に上げ、二人を罵倒し八つ当たりをして暴言を吐き散らし。
自らの手で家庭を壊してしまったのだった。
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