37 / 111
第二章南の島開拓
14.影の支配者
しおりを挟むカルフェオン王国は長い歴史の中で戦争が最も少ない国だった。
平和を保つことはとても難しく、小さな国は大国と従国になり守ってもらわななくてはならないが、そういった場合は支配を受ける状態で平和が何時崩れるか解らない。
そんなこともあってか、カルフェオン王国は同盟や友好国とは常に対等な関係を築きあげて来た。
その裏で王妃は外交官として優れていた。
いかに国を安定させるかの手腕は、王妃の振る舞いによって変わって来るし。
外交を行いながら他国との関係の調和を図ることで、これまで国を安定してきた。
その為には何事もスピーディーに動いていた。
「黒幕を早々に炙り出す必要がありますわ」
不敵に微笑み王妃の表情に大臣は寒気がした。
普段は聖母のように穏やかで美しいとされるが、この国の陰の支配者と恐れられているのだから、怒らせると一番恐ろしかった。
「調べによると隣国では正式な調査と裁判を執り行うことになっているようですわね…生ぬるいですわ」
「しかし、通常は調査を行った後に裁判を行うのが普通でして」
大臣は汗を流しながら王妃を宥めようとする。
「ええ、存じておりますわ。その場合被告人は謹慎処分をするのが通常ですが…あの馬鹿達は普通に生活しているそうですわね?正直胸糞悪いのです」
「母上、国母がそのような乱暴なお言葉を」
「あら、つい」
ごまかすように笑う王妃に一同は気が休まらない。
現役時代は戦女神と呼ばれた程に優れている王妃を怒らせたらどうなるか解りきっていたので、なんとか宥めたいのが本音だが…
「私の義娘に手を出してくださったのですから、穏やかに老後生活なんて許しませんわ」
「うむ…」
「王妃陛下!笑顔が…笑顔が怖いです」
「お黙りなさいリッチモンド」
「はい…」
外務大臣ことリッチモンド・ケイルは押し黙る。
小言を言ったとしても最終的にカルフェオン王国の王妃、ケニスワールに意見できるものはいない。
「ですが、イングリット王国の両陛下は性根がまっすぐな方であることは知っておりましてよ?ですからシャルルに手紙を渡しております…内々に此度のことをお伝えしております」
「うむ、あちらの王妃陛下は不義を許されない方だからな」
何度か顔を合わせて言葉を交わしたことがあるが、今回の事件を許すような人間とは到底思えない。
「両陛下と宰相が留守の時間を見計らって執り行うなんて、用意周到ですわ。とてもではありませんが…馬鹿達だけでは不可能です」
「まぁ、噂を吹聴して、姉を悪者に仕立て上げるだけの悪知恵には恐れ入るが」
調査した報告書を再度読み上げながらラインハルトはアイシャの行動は大胆過ぎると思ったが、かなりずる賢い女だとも思った。
同時に自分の好意を持つ男性を利用し、悲劇のお姫様を演じてアーデルハイドを悪役に仕立て上げたのだ。
「しかし、甘いですね」
「ええ、本当に愚かだこと。跡継ぎの姉がいなくなった時点でどうなるか見当もつかないとは」
既にレイジは隠居した身であるが、前当主として侯爵家の爵位を返上することは可能だった。
「甘い汁を啜って生きていたことを後悔させてあげなくてはね?世間の厳しさを十分お教えすべきですわ」
パチンと扇を鳴らしながら立ち上がる王妃の横顔はとても恐ろしく大臣達は怯えさせていた。
70
お気に入りに追加
5,504
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに
にのまえ
恋愛
夏のおとずれ告げる王城主催の舞踏会。
この舞踏会に、婚約者のエスコートなく来ていた、公爵令嬢カサンドラ・マドレーヌ(18)は酔って庭園にでてきた。
酔いを冷ましながらバラ園の中を歩き、大昔国を護った、大聖女マリアンヌの銅像が立つ噴水の側で。
自分の婚約者の皇太子アサルトと、妹シャリィの逢瀬を見て、カサンドラはシャックを受ける。
それと同時にカサンドラの周りの景色が変わり、自分の悲惨な未来の姿を垣間見る。
私、一度死んで……時が舞い戻った?
カサンドラ、皇太子と婚約の破棄します。
嫉妬で、妹もいじめません。
なにより、死にたくないので逃げまぁ〜す。
エブリスタ様で『完結』しました話に
変えさせていただきました。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!
ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。
同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。
そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。
あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。
「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」
その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。
そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。
正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる