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第二章南の島開拓
13.調査の結果
しおりを挟むその頃カルフェオン王国では迅速に調査が行われていた。
王家直属の諜報員に急がせて調べさせたのは、隣国での騒動だった。
「なんてことを」
書類を目に通しながら王妃が激怒した。
「なんて非道な。許せませんわ」
「あんまりではないか!」
国王も書類を握りつぶしながら激怒している。
書類に書かれている内容は、アーデルハイドが追放された原因だった。
「なんですの?この茶番劇は」
「侯爵家は馬鹿なのか。王族派の貴族としての自覚がないとしか思えない。まんまと狸と狐の術中にはまってしまっていることに気づいているのか?」
「気づいていないでしょうね…」
見るに堪えない調書に苛立つ王妃は直ぐ命じる。
「アーデルハイド嬢が妹を苛めたという確実な証拠も無しに婚約者を長年にわたり虐げたのは許しがたいですが、最も許せないのは両親です」
「ランフォード侯爵は正気なのだろうか。彼は婿養子という立場を理解していないな」
「解っていれば、こんな馬鹿な真似はできませんよ」
「アーデルハイド嬢の功績を調べると、誠に惜しいですな」
「領地代行としての功績に文官としての才は申し分なく。改革に関しても実績がある…これ程の才女は我が国でもまずいないぞ」
大臣達は、アーデルハイドの実績を見れば見るほど惜しくなる。
貴族令嬢であったならば、婚約の申し込みは多いだろうし、侍女としての才能も申し分ない。
「はぁー…神は残酷ですな」
ここまで優秀な令嬢を何故、こんな運命を強いたのだろうか。
もし、カルフェオン王国の王侯貴族としてフレディーと出会っていたらと思った。
「大臣、もしなんてことはありませんわ」
「そうだね。彼女が追放されなければフレディーと出会うこともなかっただろう」
運命とは実に皮肉だと思う一方で。
「アーデルハイド嬢には申し訳ありませんが、感謝いたしますわ」
「うむ…」
フレディーが心から愛せる女性に出会えた事実だけは感謝してもしたりない。
「神は、我れらを見捨てていませんでしたわ。あの子に慈悲を与えてくださったのです」
「ああ」
幼少期から道化を演じ続けることを余儀なくされたフレディーは幸福とは言えない日々を送り、王妃と国王は胸を痛めていた。
生まれた順番故に、不遇な扱いを受けて来たフレディーが幸せになって欲しいと思う一方で、叶わなかった。
「フレディーの唯一の我儘を守るためにも、少々お仕置きをします」
「急ぎ、手紙を用意せよ」
平和の象徴と国民から尊敬される王は、自分から戦をしかけたりはしない。
だが、逃げ腰だったわけではない。
武力を持ってすることをよしとしていないだけで非常の聡明だった。
そしてその補佐となるのは――。
「これより、イングリッド王国からの出国を制限なさい。貿易も制限するのです」
「かしこまりました」
「特に馬鹿共には我が国からの輸入を絶つのです」
現在、他国の輸入が頼りである国は多い。
その為国同士の貿易がやりづらくなれば政治的に問題が生じるので利用することにした。
王妃は他国の社交界でも精通しており、迅速に対応する能力に優れていた。
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